EXHIBITIONS

セシリー・ブラウン「The end is a new start」

2021.10.22 - 2022.01.15

セシリー・ブラウン This must be the place 2017-2021 © Cecily Brown
Courtesy of the artist and Blum & Poe, Los Angeles/New York/Tokyo
Photo by Genevieve Hanson

セシリー・ブラウン The chagrin of the skinnymalinks 2017-2021 © Cecily Brown
Courtesy of the artist and Blum & Poe, Los Angeles/New York/Tokyo
Photo by Genevieve Hanson

セシリー・ブラウン Nocturne in Blue 2021 © Cecily Brown
Courtesy of the artist and Blum & Poe, Los Angeles/New York/Tokyo
Photo by Genevieve Hanson

セシリー・ブラウン「The end is a new start」(Blum & Poe、東京、2021)での展示風景
© Cecily Brown Courtesy of the artist, Blum & Poe, Los Angeles/New York/Tokyo
Photo by Katsuhiro Saiki

セシリー・ブラウン「The end is a new start」(Blum & Poe、東京、2021)での展示風景
© Cecily Brown Courtesy of the artist, Blum & Poe, Los Angeles/New York/Tokyo
Photo by Katsuhiro Saiki

セシリー・ブラウン「The end is a new start」(Blum & Poe、東京、2021)での展示風景
© Cecily Brown Courtesy of the artist, Blum & Poe, Los Angeles/New York/Tokyo
Photo by Katsuhiro Saiki

セシリー・ブラウン「The end is a new start」(Blum & Poe、東京、2021)での展示風景
© Cecily Brown Courtesy of the artist, Blum & Poe, Los Angeles/New York/Tokyo
Photo by Katsuhiro Saiki

セシリー・ブラウン「The end is a new start」(Blum & Poe、東京、2021)での展示風景
© Cecily Brown Courtesy of the artist, Blum & Poe, Los Angeles/New York/Tokyo
Photo by Katsuhiro Saiki

 BLUM & POE 東京では、セシリー・ブラウンの⽇本初となる個展「The end is a new start(終わりは新しい始まり)」を開催する。

 ブラウンは1969年ロンドン⽣まれ。93年にロンドンのスレード美術学校を卒業し、現在はニューヨークを拠点として活動。抽象と具象が⼊り混じった⾝振りを伴った⼤きなスケールの絵画作品によってその名を知られてきた作家だ。その作品が参照とするモチーフは、古典、近代の絵画からポップミュージックのアルバムカバーにまでおよび、セクシャリティや欲望についての批判を湛えたあくなき問いを続けてきた。

 12点の新作が⼀堂に会する本展では、作家が近年探求してきた「難破船」という歴史的表象についての考察、そして30年にもわたるキャリアのなかで⽣まれてきた⾃⾝の作品を⼟台とした新しい探究という2つのテーマに取り組んでいる。

 ここ数年にわたる「難破船」についてのブラウンのリサーチは、ドラクロワ、テオドール・ジェリコーといったフランスの画家や、とくに本展においては、ウィリアム・エッティやその作品《セイレーンたちとユリシーズ》(1837)を対象としている。特定の登場⼈物やディテールを拡⼤するように描かれた作品群においては、⾃然の⼒によって引き起こされた⼤惨事を⽬前にした船上の切迫感や、閉所恐怖症的な感覚が増幅されている。

 参照する「セイレーンたちとユリシーズ」はホメーロスの叙事詩『オデュッセイア』の⼀場⾯を切り抜いた作品。セイレーンやギリシャ神話におけるファム・ファタル(運命の⼥)像は、男性主権的なナラティブによって世にはびこった⼥性のセクシュアリティがもたらす脅威の象徴とも指摘できるだろう。ブラウンは絵画史上の正当な主題を選び取り、その線によるペインタリーな探究を絶え間なく作品に組み⼊れながらも、同時に複雑な男⼥間の⼒関係についても⾔及している。

 いっぽう、無限の潜在的可能性や、多元性を持つ宇宙としての絵画という近年の新しい取り組みでは、最新技法を⽤い、描きはじめの作品の撮影データを同⼀素材・同サイズのキャンバス上に転写するというプロセスを踏んでいる。同じ原型の由来を持つ作品でもあっても、その描かれ⽅は多種多様だ。⾮常に似通った作品が⽣まれるいっぽうで、⾒かけ上ではまったく異なって⾒える作品もある。

 ブラウンは、⼀連のプロセスを「瞬間を捕まえる、あるいは、絵画の中で時間を停⽌し・起動する」試みと似ていると考えている。そして、初の試みとなったこの2つ⽬のテーマでは、絵画史の巨匠たちによる絵画作品やカウンターカルチャー的イメージではなく⾃⾝の過去作に⽬を向けており、1990〜2000年代の初期の作品を振り返ることで、ブラウンは過去の⾃分のアイディアを新しい探究の触媒として⽤いている。