学者の愛したコレクション

　すみだ北斎美術館は、「学者の愛したコレクション―ピーター・モースと楢󠄀﨑宗重―」展を開催。同館が有するピーター・モースコレクションより江戸時代の風俗・流行が窺える作品、そして楢󠄀﨑宗重コレクションより江戸から昭和期にかけてとくに人気や評価が高かったとされる絵師・画家の作品を厳選し、約140点を展観する。

　葛飾北斎の研究者であり、世界有数の北斎作品コレクターであったピーター・モース（1935〜93）。北斎の「諸国瀧廻り」シリーズに関する論文を執筆し、「百人一首乳母かゑとき」シリーズに関する単著『Hokusai：One Hundred Poets』を刊行、また北斎のカタログレゾネ（全作品目録）の作成を試みた。

　北斎作品や研究資料など総数約600点におよぶピーター・モースコレクションは、欧米における北斎の個人収集としては最高・最大の内容と言われており、研究者の眼で収集された希少価値の高い作品が多く含むことが特徴だ。

　いっぽう、楢󠄀﨑宗重コレクションは、昭和から平成にかけて活動した美術史家・楢󠄀﨑宗重（1904〜2001、﨑の正式な漢字は「立崎」）によって集められた。楢󠄀﨑は戦前より浮世絵雑誌の発行に携わり、国際浮世絵学会の前身である日本浮世絵協会（第二次・第三次）を設立。また、戦後間もない時期に『北斎論』を刊行するなど、北斎研究の分野でも活躍し続け、浮世絵を美術史のなかで学問的に位置づけることに尽力した。

　これらの研究活動の中で収集された楢󠄀﨑コレクションは、美術史研究上、貴重な美術資料・歴史資料を含んでおり、すみだ北斎美術館では約480点を所蔵している。

　本展では、希少な北斎作品や、高名な絵師・画家たちによる貴重な作品の数々を展示し、2人が生涯をかけて収集、研究した珠玉の名品に対するこだわりと研究業績を紹介する（前後期で一部展示替えあり）。