EXHIBITIONS

福田美蘭展 千葉市美コレクション遊覧

2021.10.02 - 12.19

福田美蘭 風俗三十二相 けむさう 享和年間内室之風俗 2020

月岡芳年 風俗三十二相 けむさう 享和年間内室之風俗 1888(明治21) 千葉市美術館蔵

福田美蘭 二代目市川団十郎の虎退治 2020

鳥居清倍 二代目市川団十郎の虎退治 1713(正徳3)頃 千葉市美術館蔵

福田美蘭 見返り美人 鏡面群像図 2016 平塚市美術館蔵

 既成のイメージへ新たな視点を提示する現代美術家・福田美蘭の大規模個展「福田美蘭展 千葉市美コレクション遊覧」が開催される。

 福田は1963年東京都生まれ。東京藝術大学美術学部絵画科油画卒業、同大学大学院修士課程修了。89年に新人洋画家の登竜門とされる安井賞を最年少で受賞し、91年には第7回インド・トリエンナーレで金賞に輝いた。以降、国内外での活躍を通して独自の作風を切り拓き、絵画の新たな可能性に挑戦し続けてきた。

 誰もがよく知る美術作品などを独自の視点で改変する福田の作品は新たな見方を提示し、人々の固定観念を覆す。その芸術はたんなる絵画という枠にとどまらず、豊かな発想力によって独自の展開を遂げている。

 また福田は、地下鉄サリン事件やアメリカ同時多発テロ事件、東日本大震災といった社会を揺るがす出来事を作品のテーマにしており、最近作には、東京2020オリンピック・パラリンピック開催前に戸惑う気持ち、新型コロナウイルスの猛威の恐れや終息への願いが表れている。

 これまでも日本美術をもとにイメージを広げた作品を多く手がけてきた福田は、本展において自ら、菱川師宣や葛飾北斎、月岡芳年、伊藤若冲など江戸〜明治時代の日本美術の名作を千葉市美術館のコレクションから選定し、それらをきっかけに制作した新作16点を中心に発表する。

 周密な観察力や入念なリサーチに基づく精緻な表現と自由な発想とが共存する福田の新たな作品は、私たちの日本美術への眼差しを更新するとともに、作品を鑑賞するとは何かということを改めて考えさせてくれるだろう。

 また本展では、福田の新作とともに、発想元となった千葉市美術館のコレクションも同時に展観。福田の飽くなき探究心をもって制作された作品を通して、コレクションの意義を見直すとともに、美術館という場における私たちの体験そのものを問い直す。