EXHIBITIONS

小牟田悠介「新しい天体」

2021.09.07 - 10.09

小牟田悠介 Unfolded #18 2021

 アーティスト・小牟田悠介(こむた・ゆうすけ)の個展「新しい天体」がSCAI THE BATHHOUSEで開催される。

 小牟田は1983年大阪府生まれ。2007年京都造形芸術大学芸術学部美術工芸学科卒業、09年東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修士課程修了。二次元と三次元を行き来しながら、次元を超えた空間や時間の広がりをも織り込むような作品世界を探求し、折り紙の展開図をモチーフとした抽象絵画を制作してきた。

 本展で小牟田は、ゲーテやヨハネス・イッテンの色彩学といった、自身が長年抱いてきた関心と探究を推し進め、その解釈をより深化させた新たな作品世界の構築に挑む。

「Unfolded」と名づけられた一連の絵画は、紙飛行機の展開図に沿ってキャンバスを直接折り込み、そのうえから色を重ねて制作された作品で、キャンバスを折ることと着色を同時に行うことは、小牟田にとって初めての試み。二次元の平面から立体へ、立体からまた平面へと、形状の遷移を繰り返しながら彩色を施された本作は、時間と空間が伸び縮みし、ひっくり返り、あるいは過去と未来が同時並行で存在するといった、量子力学的な観点における空間認識の痕跡をコンパクトに内蔵した、ミクロの模型を思わせる。

 いっぽう「Drop」は、天井から吊るされた数点の立体が、緩やかな回転を繰り返す。絵具の滴から着想された同シリーズは、平面上に落ちた実際の滴を3Dソフトに取り込み、それに時間軸を付与することによって、時に複雑な形状のループを描きつつまた原点に立ち戻る、四次元空間上の立体として造形された。

 そして半立体の作品《Warp》は、絵画と並んで壁面に設置される。小牟田にとって本作は、自身の制作の核心を端的に表し、また本展を包括する意味合いも帯びた象徴的な存在であり、折り目とともにいくつもの穴が開いた平面、その角と角を軽く重ねた単純な構造からなる。表が裏となり、裏が表となる、離れた場所が瞬時に通じ合うといった、作家にとって制作の鍵となるいくつもの思考を示す。

 自身の制作の根底にあるのは、「世界の断片をポケットサイズに手にする感覚」と述べる小牟田。「新しい天体」という包括的な視座をその取り組みに重ね、新作絵画群から立体、そして半立体と、多様な形状をめぐりつつ、造形が織りなす詩的空間の散策へと観客を誘う。