EXHIBITIONS

オスカー・ムリーリョ「geopolitics(manifestations)」

オスカー・ムリーリョ manifestation(部分) 2019-2020
Photo by Jack Hems © Oscar Murillo Courtesy of the artist and Taka Ishii Gallery

 オスカー・ムリーリョがタカ・イシイギャラリーでの初個展「geopolitics(manifestations)」を開催。本展はムリーリョの「マニフェステイション」シリーズの一環として、嵐のような激動期にコロンビアのスタジオで制作された新作ペインティングで構成される。

 ムリーリョは1986年コロンビアのラ・パイラ生まれ。2007年英国ウェストミンスター大学で美術の名誉学士号を取得、12年にロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アートの修士課程を修了。19年にはターナー賞をほか3名のアーティストと同時受賞した。

 新型コロナウイルスの世界的パンデミックの危機に際して、20年3月からコロンビアの故郷の町でアート制作と人道支援活動の両方に従事してきたムリーリョ。初公開となる「マニフェステイション」シリーズの新作はそこで描かれたものだ。

 21年に入り、コロンビアでは大規模な抗議活動が起こり、それを封じようとする国家の暴力によって人々の暮らしはますます困窮したものとなった。この時期に描かれ、そこに存在したムリーリョのペインティングには、周りで起こったことの何かしらが吸収されている。それらはパンデミックにまつわる苦難の証人であると、ムリーリョは考えている。

 シリーズのタイトルである「マニフェステイション」という言葉は、数ヶ国の言語において「政治的抗議」の意味でもっとも多く使われている。これに対して、ロンドン在住の批評家でありライターのロザンナ・マクラフリンが『Mixing It Up』(Hayward Gallery Publishing、2021)のなかで次のように解説している。「『マニフェステイション』シリーズは、グローバル資本主義がもたらした、行き場のない、そわそわした生き方への(ムリーリョの)応答だ。継ぎはぎのキャンバスは、抗議を繰り広げるための場となっている」。