EXHIBITIONS

アナ・パーク「Hello, Stranger」

2021.09.01 - 10.09

アナ・パーク Mind Over Matter 2021 Photo by Genevieve Hanson © Anna Park

 BLUM & POE 東京では、ニューヨーク・ブルックリンを拠点とするアナ・パークの日本初個展「Hello, Stranger」を開催する。

 パークは1996年韓国テグ生まれ。プラット・インスティテュート(ニューヨーク・ブルックリン)を卒業後、ニューヨーク・アカデミー・オブ・アートにて美術学修士号を取得。2019年にAXA Art Prize最優秀賞ならびにStrokes of Genius 11「Finding Beauty」大賞を受賞している。

 幼い頃に韓国からユタ州へと移住し、外部者の視点から物事を客観的に見るという経験をしてきたパーク。このような眼差しについての学びは、現在のパークが生み出す作品にも大きな影響を与えてきた。インターネットで見つけたストックイメージを主な参照元とするその木炭ドローイングは、抽象と具象のはざまを揺れながら、窃視者としての距離を保ちつつ、反復するフォーマット、アメリカの定番的なモチーフ、社会的交流におけるパフォーマティビティ(行為遂行性)といった要素を巧みに用い拡大化させた人間の条件の様相を見せている。

 本展の出品作のひとつ《Mind Over Matter》(2021)は、2枚のパネルで構成された巨大なドローイング作品。登場人物の落下という行為を主題とした壮大な物語のなかに西洋的ジャンルを成立させている。そこでは、静止画のなかでとらえられたアメリカの移民排斥主義的シンボルの追放や男性らしさについての神話といった要素が、なす術もなく落下していくカウボーイの様子とともに描かれていると同時に、ぼんやりとした木炭のストロークを伴ったコンポジションのなかには、突如として現れる視覚的効果がもたらす暴力性や衝撃が反響している。

 いっぽう《Hello, Stranger》(2021)に登場するのは、こちらを向き、髪をカールさせながら「お出かけ」支度の儀式にいそしむ女性の姿。その人物像を、様々な形態や動きがうごめく疾風、女性の頭や身体から発生したような渦巻状のカオスな形態の群れ、不協和音を告げる不安や不安定さを視覚化したイメージが取り囲み、私たちの目は別人格へスイッチしているかのような変化の最中にいる女性の姿をとらえることとなる。そこには、同時代の経験についての社会的コメントや劇場としての世界全体についての記述、世界に満ち満ちた自意識的なふるまいが作家によって描写されている。