EXHIBITIONS

s+arts summer exhibition

2021.07.30 - 08.08

参考作品。左上から時計回りに、久保真理子、中山恵美子、山田珠子、森綾乃、平田梨華

 s+artsでは、久保真理子、中山恵美子、平田梨華、森綾乃、山田珠子の5名によるグループ展「s+arts summer exhibition」を開催している。

 久保真理子は、「自己と他者の境界とは何か」と自問自答しながら、架空の故郷とそこに棲む想像上の生物を油彩で描くアーティスト。幼児期に国内外を点々とし、転居する度に転居先の人々にとっての異邦人になっていた経験から、故郷という概念に強い憧れを抱くようになったという。その作品のなかに現れる異形の生物は、現実の人間とは異なる存在として描かれているが、異邦人の象徴としても位置づけられ、それぞれの秩序や感情を持ち生きている様が表現されている。

 中山恵美子は、日常生活の風景をモチーフに、和紙や包装紙に墨とコラージュで作品を制作する作家。普段の生活の何気ない出来事にも目を向け、感情やバックグラウンドといった目に見えない事象を景色にすることで、実際の景色と混じり合わせた白昼夢のような世界観をつくり出している。今回は、出産や家を持つことなど、人生の大きなイベントを経験し改めて感じた「家族」「家」「地域」について作品に表現する。

 平田梨華は、絵画やインスタレーションを軸に、自由な形式で作品を制作。日常のなかで感じ得た様々な情景の片鱗を再構築し、無数に「ただそこに存在しているのであろう世界」の姿を作品にしている。自身との対話を繰り返しながら外の世界を認識し、積み重なる薄ぼやけた記憶の断片を自分なりに整理し、認知と受容を試みている。

 森綾乃は、布をレイヤー状に何層にも重ねては描くことを繰り返して作品を形成する。「空間に心惹かれ、追いかけています」と語る作家は、画面に広がる空間の奥深くまで潜り込み、偶然と必然の狭間に揺れるものをそっとすくい取るようにして、理屈やことばでは言い表せないありのままの表現を描き留めている。「のびやかにだらしなく」と自ら例えた、一見白い布でシンプルに見える作品には、何ものにも媚びない自由な空間が広がるような奥深さと、何気ない気配が感じられる。

 山田珠子は、制作過程で染色した布を土に埋め、微生物によって分解・腐食させた布を用いて主に立体作品を制作している作家。自然や人とつながっていく手段として制作を続けているという山田は、時間や生命などの果てないまわりに夢中になりながら、生活用品や自然物を使って遊ぶように表現している。本展では、体の中の季節が巡っていないように感じるという自身の体感をもとに、体内時計が整うようにと、日々の肌理と気配に耳を澄ませて、ゆったりと流れる時間をドリップしたような新作群を発表する。