EXHIBITIONS

カルロス・ロロン「Future Reminisce」

カルロス・ロロン 100 Years 2021 Photo by James Prinz © Carlos Rolón Studio

カルロス・ロロン Untitled(Lost Paradise II) 2018 Photo by Nathan Keay ©Carlos Rolón Studio

カルロス・ロロン Imperial Nail Salon(My Parents’ Living Room) 2013 「Homebodies」(シカゴ現代美術館)での展示風景 Photo by Nathan Keay © Carlos Rolón Studio

カルロス・ロロン Outside In 2018 ニューオリンズ美術館 での展示風景 Photo by James Prinz © Carlos Rolón Studio

カルロス・ロロン Tropicalizia 2017 ポンセ美術館での展示風景 Photo by Raquel Perez Puig © Carlos Rolón Studio

 プエルトリコ系アメリカ人アーティスト、カルロス・ロロンの個展「Future Reminisce)」がKOTARO NUKAGA(六本木)で開催される。日本での発表は15年ぶり。

 ロロンは1970年シカゴ生まれ。プエルトリコから移り住んだ両親や祖先たちの文化的な背景が色濃く反映された環境で育ったことをベースに、儀式やスピリチュアリティ、工芸や美学、そして美術史と美術機関の関係性など様々な領域を横断しながら探究し、アートの文脈に即して多様な表現を試みてきた。

 ロロンが幼少期を過ごした自宅の華美で高級な装飾品を模した調度品、父親が自作した、肉体労働者階級のバロック的美学を反映する机や椅子、安価で装飾的なガラクタ、金縁の鏡など。それらはプエルトリコの文化的背景を表象するとともにアメリカでのより良い生活への憧れや希望に満ち、作家は、こうした植民地主義以後の多様性の包摂やそれに対する憧憬、文化的アイデンティティやその社会でつくり上げられた環境を問い直すことで、歴史そのものを検証する。

 いっぽう平面作品では、連続的なモチーフが施された金縁の鏡やタイルを取り入れ、トロピカルな花を描いた絵画を24金の金箔で囲うなど、ノスタルジックなオマージュとして幼少期に見た壁紙を再現。これはたんに装飾的な意味合いだけでなく、両親の出身地・プエルトリコの歴史、スペインの植民地下で金の掘削によって樹林や植物、そして土地そのものが奪われた負の歴史に対する真摯な応答でもある。

 本展では、これらロロンの複層的に広がる物語を引き継ぎながら、多数のタイル作品とグラファイト作品を展示。プエルトリコのポンセ美術館やアメリカのニューオリンズ美術館にも収蔵された、初期のタイル作品を発展させた一連のシリーズが並ぶ。

 タイルを用いることはカリブ海周辺地域の家々への追憶を意味しており、そのなかには18世紀につくられたタイルも含まれる。北アフリカのムーア文化から受け継がれ、奴隷制度によって広がった歴史的価値のあるタイルを、ロロンはあえて安価な工業用タイルと並置して使用。そうすることで、実際に大量生産製品のタイル製造に携わりながらも、美術に馴染みの薄い労働者たちに焦点を当て、素朴な歴史へと導くノスタルジーを再創造し、移民の歴史への関心を誘う。

 ロロンは、自身の出自まで連綿と連なる歴史を背景とした装飾的な美学に忠実であり続けるいっぽう、その表現や作品解釈をつねに鑑賞者にゆだねる。作家にとってもっとも身近な記憶の断片であるタイルが語る歴史は、パブリックなノスタルジーへと接続し、様々な国籍や背景を超え人々に親密な鑑賞体験をもたらすだろう。