EXHIBITIONS

フォトグラフィック・ディスタンス

―不鮮明画像と連続階調にみる私と世界との距離―

2021.07.17 - 09.05

松本旻 風景 9-B(Printing) 1975

斎藤智 Untitled 79 - A 1979

秋岡美帆 ゆれるかげ 1991

 栃木県立美術館が企画展「フォトグラフィック・ディスタンス ―不鮮明画像と連続階調にみる私と世界との距離―」を開催する。

 1970年代に登場したシルクスクリーンなどによる写真製版版画。油彩画に取って代わるように美的価値が付与され、網点ドットにより疑似的階調を施されたハーフトーンは、低質の写真を拡大する方便のひとつでもあった。

 しかし、80年代に高度な技術に裏打ちされた写真アーティストたちが生み出す、巨大サイズでありながらも粒子の荒れることのない高精細な写真プリントが出現すると、網点ドットによるハーフトーン画像は、現代美術の表舞台から淘汰されていった。

 ところが20世紀末から今日にかけて高解像度の画像が世界にあふれ始めると、ボケやブレの不鮮明画像が持つ魅力が新たな美的価値として注目されるようになる。

 本展は、現代美術から放逐されたかに見えた写真製版などによる版画と、高精細の写真プリント、さらには写真のような絵画や版画など約90点による三様の多彩なマチエールを比較して紹介。デジタル時代における不鮮明画像の新たな美的価値を確認するとともに、写真固有の連続階調の意義を再考する。

※栃木県立美術館は新型コロナウイルス感染症拡大により8月23日〜9月12日まで臨時休館。これに伴い、「フォトグラフィック・ディスタンス ―不鮮明画像と連続階調にみる私と世界との距離―」展は8月22日をもって終了。最新情報は公式ウェブサイトへ。