EXHIBITIONS

ブライアン・ハート「8 Paintings(from the midlands)」

ブライアン・ハート Bedroom,(Part 2) 2021

ブライアン・ハート P. Chair,(Paddy's version) 2021

ブライアン・ハート P. Chair,(M and J) 2021

 アイルランドを拠点に活動する作家、ブライアン・ハートの日本初個展「8 Paintings(from the midlands)」がMAKI Gallery(表参道)で開催されている。

 ハートは1978年生まれ。自身の私生活の痕跡を残しつつ、解体された部屋の構成を具象と抽象の狭間で揺らめくようなタッチで描き出された、壮大なスケールのキャンバス作品で知られる。

 テーブルランプや椅子、額に入った写真などの家庭的な生活用品たちは、時折、形態を特定しづらい人物像とともに作中で現れては消え、物語への手がかりは作中では明らかにされない。大胆な色彩とトーンを落とした色彩を巧みに使いながら、ハートは、親密でプライベートであると同時に普遍的でなじみのある視覚ネットワークを介して、見る者を作家の世界観へ引き込むための入り口をキャンバス上につくり出している。

 本展では、8点からなる新作のペインティングシリーズ「8 Paintings(from the midlands)」を展示。新シリーズは、作家の身の回りを描いた過去作の続きの一部分であり、自伝的・個人的なイメージを媒体として、現代における生活のより壮大な物語へと到達している。

 本展を代表する作品《Bedroom,(Part 2)》に描かれているのは、寝室で眠るハートの妻の親密なシーン。他方、《P. Chair,(Paddy's version)》と《P. Chair,(M and J)》では、何世代にもわたり家族とともに過ごしてきた、妻の大叔父の椅子が中心となるように配置されている。

 有機的に構成されたダイナミックなペインティングには、作家自身とその周囲についての痕跡が含まれていると同時に、語られざる物語への手がかりや未踏の世界へ続く道が複雑に組み込まれている。ハートは、ありふれた毎日が堆積されたなかに抽象化のレンズを投げ込むことで、日常生活の継続的な質感を捕らえようとしている。