EXHIBITIONS

アレック・イーガン「Miro’s Corner」

アレック・イーガン Miro’s Corner 2021

アレック・イーガン Deep Sunset 2021

アレック・イーガン Behind the Mountains 2021

 ロサンゼルスを拠点に活動するアーティスト、アレック・イーガンのアジア初個展「Miro’s Corner」がMAKI Galleryで開催される。

 アレック・イーガンは1984年ロサンゼルス生まれ。2007年にオハイオ州ケニオン大学を卒業後、13年にロサンゼルスのオーティス・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザインにて修士号を取得し、現在もロサンゼルスを拠点に活動している。

 華やかな色彩と形態の表現、そして独自の筆づかいで高い評価を受けてきたイーガンは、自身の記憶や空想から生まれた架空の屋内のワンシーンや風景を、厚みのあるインパストを用いて表現してきた。華やかな花模様で彩られた室内画には、家具や本、靴などが象徴的なモチーフとして繰り返し登場し、ありふれた日常の一場面に奥深さを与えている。

 いっぽう広大で爽快感あふれる風景画は、アメリカの感傷的なナショナル・アイデンティティに欠かせない「自然」に目を向け描かれている。人間の姿が一切見当たらないその作品からは、メランコリックな雰囲気が漂い、時が止まったような不気味ささえも感じ取れる。

 本展は、代表作である室内画と風景画にフォーカスし、イーガンの過去最大規模の作品である《Miro’s Corner》を中心に構成。「Miro」とは画家のジョアン・ミロを指すと同時に、パンデミックの最中にイーガンのもとに誕生した愛娘ミロが、これ以上ない大きな喜びと圧倒的な変化を作家にもたらしたことを意味している。また、タイトルの後半の「Corner」には、パンデミックによる私たちの経験を含めた、比喩的な意味さえも込められており、「隅(corner)を見つめるという視点と象徴性は、言葉そのままに、この時期に私たち全員が自身の空間や、精神的に追い詰められていた可能性があることを示唆しています」と作家は語る。

 ゴッホから北斎まで幅広くおよぶ美術史的引用をふんだんに盛り込みながら、絵画の伝統に忠実かつ挑戦的に取り組むイーガン。郷愁を誘うその絵画には、内部と外部、二次元と三次元、現実と超現実、そして自然と人工、これら対立する様々な要素や文脈、意味が複雑に混ざり合い、イーガンの作品というひとつの構造がつくり上げられている。魅力的でありながらも謎に満ちたイーガンの作品群は、鑑賞者をその世界へ引き込もうと誘い、また深い内省を促すだろう。