EXHIBITIONS

特別展「国宝 聖林寺十一面観音 ―三輪山信仰のみほとけ」

2021.06.22 - 09.12

十一面観音菩薩立像 奈良時代・8世紀 奈良・聖林寺蔵 国宝

十一面観音菩薩立像(部分) 奈良時代・8世紀 奈良・聖林寺蔵 国宝

地蔵菩薩立像 平安時代・9世紀 奈良・法隆寺蔵 国宝

月光菩薩立像(部分) 平安時代・10~11世紀 奈良・正暦寺蔵

日光菩薩立像(部分) 平安時代・10~11世紀 奈良・正暦寺蔵

聖林寺外観

山ノ神遺跡出土品 奈良県桜井市 山ノ神遺跡出土 古墳時代・5~6世紀 東京国立博物館蔵

三輪山

 仏教伝来以前の日本では、神は山、滝、岩や樹木などに宿ると信じられ、本殿や神の像はつくらず、人々は自然のままの依り代を拝んでいた。そのかたちが現在まで続いているのが、三輪山を御神体とする大神神社(おおみわじんじゃ)だ。

『古事記』の神話によれば、三輪山には人々が入ることができない禁足地があり、そこから古代の祭祀を物語る子持勾玉や、造酒に用いる器具の小さな土製模型が出土しており、古くからの信仰の存在をいまに伝える。

 やがて奈良時代に仏教が興隆すると、神仏関係の接近が見られ、神に密接にかかわる寺がつくられるようになった。大神神社でも大神寺(鎌倉時代以降は大御輪寺)が造られ、仏像を安置。拝殿が初めてつくられたのは鎌倉時代のことで、現在の拝殿は1664(寛文4)年に徳川家綱が再建したものだ。幕末、新政府により神仏分離令が発せられると、廃仏毀釈の危機にさらされるが、大御輪寺の仏像は、同寺の住職や周辺の人々の手によって、近傍の寺院に移された。《十一面観音菩薩立像》(国宝)をかつて安置していた大御輪寺は、大直禰子(おおたたねこ)神社(若宮)となり、今日に至る。

 本展では、かつて大神寺にあった《十一面観音菩薩立像》(国宝、聖林寺蔵)、《地蔵菩薩立像》(国宝、法隆寺蔵)をはじめとする仏像が集結。仏像の優雅な表情や均整のとれた体軀、しぐさの美しさを様々な角度から鑑賞できる展示に加え、仏教伝来以前の日本の自然信仰を示す三輪山禁足地の出土品なども並ぶ。

 奈良時代に造像された数少ない天平彫刻のなかでも名品と称される、《十一面観音菩薩立像》の奈良県外での公開は本展が初めて。また会場では、禁足地との結界として設けられた大神神社の三ツ鳥居を再現し、三輪山信仰にも迫る。