EXHIBITIONS

ルネ・ラリック リミックス

ー時代のインスピレーションをもとめて

2021.06.26 - 09.05

ルネ・ラリック 常夜灯《ツバメ》、ほや《つむじ風》 1919 ギャルリー オルフェ

ルネ・ラリック バタフライ・ブローチ《シルフィード》 1900頃 個人蔵 協力=アルビオン アート・ジュエリー・インスティテュート

ルネ・ラリック 香水瓶《シダ》 1912 北澤美術館蔵 撮影=清水哲郎

ルネ・ラリック 「工芸の中庭」列柱廊・扉装飾パネル《ガラス職人》 1925 大村美術館(角館)蔵

ルネ・ラリック シール・ペルデュ花瓶《ユーカリ》 1923 北澤美術館蔵  撮影=清水哲郎

 東京都庭園美術館が展覧会 「ルネ・ラリック リミックスー時代のインスピレーションをもとめて」を開催する。

 ルネ・ラリック(1860〜1945)は19世紀末から20世紀半ばにかけて、ジュエリー作家/ガラス工芸家という肩書を超え、生涯を通して芸術家としての独自の道を切り拓いた。フランス・シャンパーニュ地方の小さな村に生まれたラリックは、幼少期から身近な存在だった「自然」から多様なインスピレーションを得た。

 自然を注意深く観察することによって培われたラリックのまなざしは、やがてイギリスでの経験や日本美術からの影響、大戦間期における古代ギリシア・ローマへの回帰やエキゾティックな嗜好、新しい女性たちのイメージなど、20世紀初頭のフランスに起った様々に異なる芸術潮流と結びつきながら磨かれていった。

 例えば、ラリックは浮世絵に着想を得て、パリ郊外の自邸付近で撮影した雪景色をペンダントで表現。また1909年に他界した妻アリスの面影をシダのなかに刻印した香水瓶など、同時代の世界や個人的な記憶に、鋭い観察眼と想像力によって新しいかたちを与え、それを「装飾品」として人々の身近なものにした。希少なジュエリーからより多くの人々のためのガラス作品への転換は、急速に変化する社会のなかで芸術と生活がどのような関係を結ぶことができるのかを示そうとするものだった。

 ラリックが生きた時代に建設された旧朝香宮邸で開催される本展では、ラリックのガラス作品がもっとも美しく見える自然光を取り入れて展示を構成。ラリックが自然を起点としていかに世界を観照し、装飾という芸術を希求したのかを明らかにする。

 またキャリア初期に手がけた希少なジュエリー20点を2点のデザイン画とともに公開。大女優サラ・ベルナールや詩人ロベール・ド・モンテスキューらにも愛され、「モダン・ジュエリー」の祖と言われるラリックのジュエリーを実際に鑑賞できる貴重な機会となる。

 そして本館の旧朝香宮邸の空間と対照的な新館ギャラリーでは、建築家・中山英之による「もうひとつの建物」を展開。生活の空間で使われてきたラリックのガラス作品と、作品のバックグラウンドを「図鑑」のように体験できる新鮮な展示空間では、ラリック作品の新しい魅力に出会うことができるだろう。