EXHIBITIONS

五島記念文化賞 美術新人賞研修帰国記念

谷原菜摘子展「紙の上のお城」

2021.05.26 - 06.20

谷原菜摘子 審判 2019 © Natsuko Tanihara Courtesy of MEM The Jean Pigozzi Collection

谷原菜摘子 鳥人間と人間鳥 2020 © Natsuko Tanihara Courtesy of MEM

谷原菜摘子 期待 2020 © Natsuko Tanihara Courtesy of MEM

 谷原菜摘子の個展「紙の上のお城」がMEMで開催。作家の「五島記念文化賞」美術新人賞研修帰国を記念した本展は、上野の森美術館ギャラリーでの個展「うきよの画家」との同時期開催となる。

 谷原は1989年埼玉県生まれ。2016年京都市立芸術大学大学院美術研究科絵画専攻油画修了、21年京都市立芸術大学美術研究科博士(後期)課程美術専攻(絵画)修了。17年に五島記念文化賞新人賞を受賞し、同年秋〜18年秋までの1年間、旧五島記念文化財団の助成によりフランス・パリへ研修滞在した。現在は関西を拠点に制作・活動を行う。

 谷原は、黒や赤のベルベットを支持体に、油彩やアクリルのほかにグリッターやスパンコール、金属粉なども駆使し、「自身の負の記憶と人間の闇を混淆した美」を描いてきた。フランス滞在中には積極的に周辺諸国を巡り、以前から関心を抱いていた北方ルネサンスなどの古典作品や、第一線で活躍する現代作家の作品など、これまで画集や資料でしか見ることのできなかった作品を実際に鑑賞することに時間を費やした。

 それは、現在まで脈々と継がれる欧州の名作から受けた「刺激」が、作家に「自身の絵画とは何か、どうあるべきか」という根源的な問いに向かわせることになり、渡仏は作家のターニングポイントとなった。谷原は帰国後、「これが現在の自分の絵である」という確かな実感と「何を描いても良い、如何なるものを描いてもそれが自分の作品になる」という強い確信を得たと語る。

 MEMの展示では、渡仏中から描き続けている、パリの市井の人々のポートレイトをはじめとした新作のパステルドローイングをまとめて発表。いっぽう上野の森美術館ギャラリーでは、渡仏中に取材を繰り返して得た知見をもとに、帰国後に制作した新作《創世記》(2021)、また渡仏前の代表作としてVOCA奨励賞も受賞した《穢土》(2015)などの大型の油彩作品を中心に展示する(上野の森美術館ギャラリーでの一般公開は6月1日〜6日まで)。