EXHIBITIONS

省亭・暁斎・是真

~パリ・フィラデルフィア万博、海を越えた明治の日本美術~

2021.04.24 - 05.05

渡邊省亭 藤花 枯柳

渡邊省亭 風神雷神図

河鍋暁斎 楊貴妃之図

河鍋暁斎 七福神図

柴田是真 繪帖(12枚組のうちの一部)

柴田是真 繪帖(12枚組のうちの一部)

会場では貴重な作品の数々を、ガラスケースを使わずに展示

会場では貴重な作品の数々を、ガラスケースを使わずに展示

 加島美術は、「省亭・暁斎・是真~パリ・フィラデルフィア万博、海を越えた明治の日本美術~」展を開催。近年再評価の機運が高まる明治時代の日本画家、渡邊省亭、河鍋暁斎、柴田是真の3人にフォーカスする。

 19世紀末、欧米諸国を中心に急速に国際化が進み、各国がその文明の栄華を競い合った万国博覧会が盛り上がりを見せた。新しい文化の息吹は産業の世界のみならず、美術の世界にも起こり、それまでにない美術の潮流が数多く生まれた。そんな華やかな舞台で、世界を驚かせた日本美術の巨匠たちがいた。

 柴田是真(1807〜1891)は江戸に生まれた漆工(蒔絵師)であり、四条派を学んだ画家。その仕事で特筆すべきは漆絵であり、是真は漆絵において新技法を創始し、明治期の漆工界に大きな足跡を残した。また日本画においても、粘性の強い漆で洋風の質感を伴う漆絵を多く残し、欧米において高い評価を得ている。

 同じく江戸に育った河鍋暁斎(1831〜1889)は、狩野派の画塾を卒業後、幕末からは狂画(戯画)、錦絵を手がけて人気を博し、欧米ではとくに浮世絵、狂画で知られる。そんな暁斎の画を彩るのは「反骨」と「風刺」の精神。類稀なる画才を武器に、権力に抗い、皮肉を込めて時代を鋭く批判したその作風は長年を経ても輝きを失わない。

 柴田是真の取り持ちで、歴史画を得意とした菊池容斎に弟子入りした渡邊省亭(1852~1918)は、78年パリ万博での評判を機に渡仏し、そこで印象派と出会った。容斎や是真から継承した洗練された江戸の美意識と、渡仏によって身に着けた西洋感覚とを高い次元で融合させた画風は、日本美術を見る機会が減ってしまった現代の私たちの目にも馴染みやすい。

 3人の類まれな美的感覚と表現力は海を越え、当時欧米諸国で盛んに開催された万国博覧会という大舞台でも賞賛を集めた。本展では、近年とくに再評価の機運が著しい絵師たちの作品およそ40点を一堂に展示する。