EXHIBITIONS

田窪恭治「Camélia」

2021.04.17 - 06.05

田窪恭治 Camélia 2021-#10 2021 © Kyoji Takubo Courtesy of KOTARO NUKAGA

田窪恭治 Camélia 2021-#1 2021 © Kyoji Takubo Courtesy of KOTARO NUKAGA

田窪恭治 Camélia 2021-#7 2021 © Kyoji Takubo Courtesy of KOTARO NUKAGA

田窪恭治 Camélia 2021-#12 2021 © Kyoji Takubo Courtesy of KOTARO NUKAGA

 アーティスト・田窪恭治の個展「Camélia」がKOTARO NUKAGAで開催。本展では、ヤブツバキをダイナミックに表現した切り紙絵13点を発表する。

 田窪は1949年愛媛県生まれ。多摩美術大学絵画科在学中の71年に東京で初の個展「イメージ裁判」を開催。自らの身体行為を中心とするイベント性の強い作品を発表し、ポストもの派世代を代表するアーティストとして注目を浴びた。84年にはヴェネチア・ビエンナーレに日本館代表として参加し、廃材を使ったアッサンブラージュの作品シリーズを出展する。

 80年代後半の、田窪のターニングポイントとも言える《絶対現場 1987》(鈴木了二、安齊重男との協働プロジェクト)は、再開発により取り壊される木造住宅を再構成して来訪者に内装を体験してもらい、再び解体した作品。この時期に制作の領域は建築にまで拡張していき、その後の田窪の代名詞となる再生プロジェクトにもつながっていく。

 89年、田窪はフランスのノルマンディー地方に移住。そこで廃墟寸前の礼拝堂に惹かれ、11年がかりの再生プロジェクトを指揮することとなる。言語や文化の壁を乗り越えながら、資金調達から礼拝堂の再生作業、壁画制作まで、地域の人々との協働で作業を続け、99年に新たな礼拝堂が完成。いまも地元の人たちに愛されており、この再生プロジェクトの功績で高く認められて、フランス政府から芸術文化勲章オフィシエを授与された。

 2000年の帰国後は香川県・金刀比羅宮にて「琴平山再生計画」を実施するほか、聖心女子大グローバルプラザエントランスのモザイク壁画の制作など、作家がいなくなった後も表現の現場として生き続ける「風景芸術」を生み出している。

 本展では、ヤブツバキをモチーフに描いた新作の切り紙絵のシリーズを展示。田窪は「琴平山再生計画」で訪れた、温暖な気候となだらかな稜線の小島が浮かぶ瀬戸内海ならではの穏やかな風土と、それに呼応するようなヤブツバキの凛とした佇まいから、この土地の性格を読み取り、「まさに有るが如き花」だと感じ、とても大切な素材になったと言う。

 特徴的なセピアカラーのドローイングや天然石を用いたモザイク作品など、素材や手法を変えながら繰り返し作品に登場するモチーフには、ヤブツバキへの特別な思いの込められており、作家が心新たに取り組む「風景芸術」の幕開けを鮮やかに彩る。

※KOTARO NUKAGA(天王洲)は5月12日から再開し、本展の会期を6月5日まで延長。詳細・最新情報は公式ウェブサイトへ。