井上涼展 版画スリスリびじゅチュ館

　東広島市立美術館は、同館の主な所蔵品である「版画」をテーマとした「井上涼展 版画スリスリびじゅチュ館」を開催。アーティストの井上涼が制作したオリジナル版画やその制作過程の紹介に加えて、同館所蔵の版画作品などを交え、様々な技法で表現される「版画」の魅力を楽しくわかりやすく伝える。

　ユニークなアニメーションと印象的な音楽で独自の世界を展開する井上涼。NHK Eテレの番組『びじゅチューン！』では、作詞・作曲・歌・アニメーションのすべてを手がけている。
　
　そんな井上が、東広島市立美術館の収蔵作家であり、日本を代表する銅版画家のひとりである中林忠良の指導のもと、銅版画に挑戦。版画の種類のなかでも多種多様な技法がある銅版画のうち、メゾチント、エッチング、アクアチントの3つの技法で制作された、『びじゅチューン！』」の人気キャラクターたちが本展で初披露される。

　また井上は、アダチ版画研究所の協力を得て、『びじゅチューン！』より「写楽式洗顔」のキャラクター・江戸兵衛の浮世絵版画を制作。絵師・彫師・摺師の職人たちによる分業制でつくられる浮世絵版画について、本展では実際に使用された版木や道具、制作過程の映像や資料とともに解説する。

　井上が体験した浮世絵版画（木版画）や銅版画以外にも多くの種類がある版画。同じ版を使い、異なる表現が可能となる版画の特徴を活かした作品群に注目したい。

　会場では版画作品のほか、『びじゅチューン！』のアニメーション原画やスタジオセット再現の展示、また井上が過去の展覧会のために手がけた屏風作品や陶芸作品などこれまでの創作活動も紹介。そして新作のオリジナルアニメーションが展覧会の最後を飾る。