EXHIBITIONS

山本晶「Playing with Maps」

山本晶 Water mark(部分) 2021

 アーティストの山本晶が、アートフロントギャラリーでは3年ぶりとなる個展「Playing with Maps」を開催する。

 山本は1969年東京都生まれ。95年武蔵野美術大学大学院造形研究科修了。2度の「VOCA展」入選、文化庁の在外研修員としての渡米経験を経て、2008年の「DOMANI展」、そして同ギャラリーでの5度の個展など、今日まで精力的にキャリアを重ねてきた。

 主に油彩画を制作してきた山本を特徴づけている点として、その鋭い色彩感覚により構成された、鮮やかでハイキーな色面のレイヤーが挙げられる。「まったく関係のないもの同士がひとつの空間を形成するポリフォニックな状態」を描き出す山本のペインティングは、せめぎ合う色面同士が共生とハーモニーを創出し、鑑賞者を画面内の色と色との空間にある恍惚へと誘う。

 本展で山本は新たな試みとして、地図のパースペクティヴのなさや非対象性、地図上の境界と明確にその場所の区分ができないイデアなど、地図の持つ普遍性と場所の関係性をテーマにした展示を展開する。

 山本が地図に注目したきっかけは、2020年11月に山本が参加したアートプロジェクト「木曽ペインティングス」での制作中の体験がもととなっている。フィールドワークとして長野県木曽の域内を探索した際、山本は地図と実際の場所との感覚のズレや、住人の暮らしや感情など、地図の区分通りには分け隔てられないものの存在に気づいたという。

 本展で展示されるのは、シルクスクリーンや光など、油絵以外のメディウムも積極的に取り入れた作品群。木曽の地図をベースに流域や道路、行政区の地理的情報に4色の色面がシルクスクリーン印刷された新作《Water mark》は、一枚一枚の版のレイヤーが微妙にずらされることにより、それぞれの色面の境界線が侵食しあいその境界を曖昧にする。研ぎ澄まされた色彩感覚を用いつつも、つねに次代の表現を探究する山本の新境地に注目してほしい。