EXHIBITIONS

岩名泰岳「みんなでこわしたもの」

岩名泰岳 みすて 2021 Photo by Tadashi Hayashi

 三重県を拠点に活動するアーティスト・岩名泰岳の個展「みんなでこわしたもの」がタグチファインアートで開催される。

 岩名は1987年生まれ。2010年に成安造形大学造形学部造形美術科洋画クラスを卒業後すぐに、アートアワードトーキョーで準グランプリを受賞。12年までドイツに滞在し、研究生としてデュッセルドルフ美術アカデミーで学んだ。16年に第1回三重テレビ大賞、20年には三重県文化賞文化新人賞を受賞。現在は故郷である三重県伊賀市島ヶ原を拠点に制作を行い、大阪や東京のギャラリーでの個展開催や、美術館での展示の機会も増えている。

 岩名は2013年に結成された島ヶ原村民芸術「蜜ノ木」の初代代表を務め、衰退していく集落に残って地元の歴史や風土、文化に深く根ざしながら、それぞれの分野で現実と戦っていく若者たちの創造的な行為自体をアートとして発信。都会の発想から生まれたアートを地方に移植する「アートによる地域興し」とは一線を画す、この「蜜ノ木」の活動は、近年、アートコレクティブやローカリズムの事例としてとくに注目されている。

 そのなかで生み出される岩名の作品は、故郷の自然や村の信仰をモチーフとし、多くの場合は具象的な題材から出発してはいるものの、その抽象度は高く洗練されたものとなっている。

 2020年の春からの新型コロナウイルスによる移動の自粛要請のもとで、地元の野山をさまよい、打ち捨てられた廃屋や文字の消えかかった墓石に、忘却や死について思索に耽ったと言う岩名。本展では、過剰な移動がもたらした災禍について、過疎地から世界を思いながら描いた新作を展示する。