EXHIBITIONS

鈴木藏の志野

造化にしたがひて、四時を友とす

2020.12.12 - 2021.03.21

鈴木藏 志野茶碗 2019 撮影=白井亮

「志野」の重要無形文化財保持者であり現代志野を代表する陶芸家、鈴木藏(すずき・おさむ)の展覧会が開催されている。

「志野」は、ざんぐりとした焼け味の土に長石の白釉を合せることで生まれるあたたかみのある白や、窯の熱により引き出される鮮やかな緋色が魅力のやきもの。岐阜県の東濃地方で桃山から江戸時代初期にかけて優れた茶陶や食器が生産された後、技術が途絶えていたものが、昭和初期になり陶芸家や学者、愛好家らによって注目され、研究・復興が進められた。

 20代より創作の道に入った鈴木は、郷里のやきものである志野に取り組むと、現代の作家ならではの技術と創造性をもって挑み、数々の陶芸展で賞を重ね評価を高めてきた。

 土や釉、焼きあがりなど桃山の志野の美しさを見据えながら、独自の改良を加えたガス窯による焼成や釉薬試験を重ねてつくられる鈴木の志野は、多彩な装飾表現と釉調の豊かさ、量感に富んだかたちの強さを特徴とし、独特の存在感を放つ。

 本展の副題「造化にしたがひて、四時を友とす」は、松尾芭蕉の「笈の小文」から取り、つくり手の個性や創意が自他を超えた先に生まれる、不易流行のかたちを目指す鈴木の作陶姿勢を示したもの。本展では鈴木のライフワークである「志野茶碗」の未発表作に、花⽣や⼤型作品、また⼀部旧作、特別出品作などを加え、およそ60点を展示している。