EXHIBITIONS

グスタフソン&ハーポヤ「Becoming──地球に生きるための提案」

グスタフソン&ハーポヤ Becoming 2020 映像からのスチル

グスタフソン&ハーポヤ Becoming 2020 映像からのスチル/語り手の一人、振付家のサトゥ・ヘッララ。幼年時代を過ごしたフィンランドの森にて。

グスタフソン&ハーポヤ Becoming 2020 映像からのスチル/セックスワーカーであり、アート・プロフェッショナルであり、アーティストコレクティブ、スラットアーティスツの創始者でもある、ミラ=マリ・ピュルッカネンとカミッラ・ランタネン。ヘルシンキにて。

グスタフソン&ハーポヤ Becoming 2020 映像からのスチル/語り手の一人、アーティストのアウネ・カッリネン。タンミサーリの自宅にて自身の子供とともに。

グスタフソン&ハーポヤ Becoming ヘルシンキ市立美術館での展示風景 撮影=Sonja Hyytiäinen(HAM)

グスタフソン&ハーポヤ Becoming ヘルシンキ市立美術館での展示風景 撮影=Sonja Hyytiäinen(HAM)

 フィンランドの学際的ユニット、グスタフソン&ハーポヤの日本初個展「Becoming──地球に生きるための提案」が開催される。

 グスタフソン&ハーポヤは、ニューヨークを拠点とするビジュアルアーティストのテリケ・ハーポヤと、フィンランドの著述家・脚本家、劇作家でもあるラウラ・グスタフソンによって結成され、2012年より人間以外の種の観点から歴史と社会を探求するプロジェクトを開始。人間と動物の概念を解体し、それらが人種化や性差別、社会的排除のメカニズムといかに関連しているかという試みへと展開してきた。

 2人のすべての作品に通底するのは、ユートピアの思想や別の世界の可能性といったテーマ。詩的なアプローチと記録資料を融合させたインスタレーションや映像、パフォーマンスなどの表現手法を組みあわせた作品において、2人はとくにプロジェクトと身の回りの現実を結びつけることを重要視している。

 本展は、人間を中心とする世界観から生じる問題に焦点を当て、より包括的な社会概念への道を開くことを目指してきたグスタフソン&ハーポヤのプロジェクトを、日本で鑑賞できる貴重な機会。人間であるために不可欠なものとは何かを問いかける映像作品《Becoming》(2020)を中心に構成される。

 同作品では、海の見える穏やかな場所や緑豊かで静かな森、街のなか、あるいは室内などの様々な場所で、活動家や思想家、アーティスト、介護者、子供たちなど、37名の回答者が出演。人間の暮らしにとって有意義なあり方をめぐる数々の問いのなかから、いま芽ぐみつつあり、かつ育くむべき現象について、それぞれの考えを語る。

 本展では、《Becoming》をもとに編纂された『つぼみの本──地球に生きるための手引き』をともに展示(会場にて販売も実施)。映像作品とこの書籍を通して鑑賞者はそれぞれ、世界が危機に直面しているいま、いかに生きるべきかという問いについて、考えるための手がかりを得ることができるだろう。