EXHIBITIONS

墨人 森田子龍

思文閣銀座
2021.01.29 - 02.13

森田子龍 還 1961

左より《嘯》《脱》1963、《坐俎上》1969

左より《帰》《懶》1963、《観》1965、《回光》1967

左より《静思微見》1941、《樹》1995

 戦後日本の書芸術の景色を変え、現代美術史に大きな足跡を残した作家・森田子龍。その仕事に焦点を当てた展覧会「墨人 森田子龍」が思文閣(銀座)で開催される。

 森田は1912年兵庫県生まれ。37年に上田桑鳩に師事し、書を学ぶ。同年、翌38年に大日本書道院展で推薦金賞(最高賞)を受賞。48年に『書の美』を、51年には『墨美』を創刊する。

 森田が活動していた50年代初頭は、戦後日本の混沌の様相をなお残し、伝統芸術である書をめぐる革新的な運動が起こっていた。やがて、50年代後半には日本の前衛書と欧米の抽象絵画は交錯し、その立役者こそが、造形芸術としての書を世界に知らしめた森田だった。

 森田が1951年に創刊し、全301号を編集した書芸術総合誌『墨美』は、他に類のない新しい芸術媒体であり、50〜60年代にかけてカテゴリーや国を超えて、芸術家の交流を促した。そして52年、既存の書壇の因習を打破し現代書芸術を再確立すべく、井上有一、江口草玄、関谷義道、中村木子の4人の同志とともに森田が京都で結成した前衛書グループ「墨人会」は、戦後日本の前衛書運動を代表する存在として、60年代にかけて海外に積極的に進出していくこととなる。

 書芸術に新たな概念を吹き込み、自らの言葉と体の動きを「かたち」に表現してみせ、日本の書を世界の土俵に乗せることを果たした森田。本展では、森田が世界の美術界において現代作家として認められ、国際的にも活発に活動を繰り広げた60年代の作品を中心に、最初期の40年代〜80・90年代に至る書表現の軌跡を紹介する。

 また、自己のからだの動きをかたちにあらわらすことにこだわった森田のありようを示す、制作風景の映像資料や、自ら編集主幹を務め、優れた企画者・編集者・芸術理論家としての才能を発揮した雑誌『墨美』などの関連資料もあわせて展示する。