EXHIBITIONS

十時啓悦 ― 樹木と漆と暮らし

十時啓悦 洗朱布目大盛器 2019

 木漆工芸家・十時啓悦(ととき・あきよし)の手仕事を紹介する展覧会「十時啓悦 ― 樹木と漆と暮らし」が開催されている。
 
 十時は1950年大阪府豊中市生まれ。73年武蔵野美術大学造形学部産業デザイン学科工芸工業デザイン専攻卒業。75年東京藝術大学大学院美術研究科漆芸専攻修了後に漆芸家の野田行作に師事。77年に独立し、木漆工芸家として活動を始める。第18回・第22回「日本クラフト展」(1977・1981)で優秀賞受賞など、国内外で積極的に展覧会に出展するいっぽうで、86年に武蔵野美術大学造形学部工芸工業デザイン学科の専任講師を経て、94年からは教授として多くの学生の指導にあたっている。

 十時は制作にあたってつねに、「現代の暮らしのなかで生きるものをつくりたい」と意識してきた。工芸品でありながら、毎日の生活を彩る実用品として手に取りやすいよう高価な素材は使用せず、無駄のない手数とシンプルな仕上げで作品を制作。そして、それぞれの器に個性をもたせて「飽きさせない」ように心がけているという。十時のものづくりは伝統技法の踏襲という枠を越えて、木と漆が織りなす「もの」としての「用の美」を追求している。

 本展では、暮らしのなかで使われる、椀、盆、皿、菓子鉢、酒器などの食器を中心に、十時の新作と近作を展示。木と漆という自然素材が見せる表情の豊かさ、暮らしに彩りを添える調度品としての魅力を紹介すると同時に、作品の制作方法や工程についての解説展示によって、十時特有の技法をひも解く。