EXHIBITIONS

Door is Ajar ドアは開いているか 山本直彰展

山本直彰 ASK, SEEK, KNOCK, - Door 2017 撮影=末正真礼生 写真提供=コバヤシ画廊

 現代日本画を牽引する作家のひとり、山本直彰の退任記念展「Door is Ajar ドアは開いているか 山本直彰展」が武蔵野美術大学 美術館・図書館で開催されている。

 山本は1950年生まれ。愛知県立芸術大学日本画科で片岡球子に師事。4年次からは大森運夫に学んだ。大学在学時より新制作協会展、創画展に出品。同大学大学院修了後、87年に創画会賞で初受賞を果たす。96年には神奈川県民ホールギャラリーで「現代作家シリーズʼ 96 山本直彰展」が開催。2009年の平塚市美術館での個展「日本画の今 山本直彰展 帰還する風景。」の翌年、芸術選奨文部科学大臣賞、神奈川文化賞を受賞する。09年より武蔵野美術大学造形学部日本画学科客員教授に着任し、11年から本年まで同学科特任教授を務めた。

 従来の日本画の枠に収まらない、内面性の強い抽象的な心象世界を描き続けてきた山本。とりわけ、実物のドアを支持体として用いた「DOOR」シリーズは、新たな日本画の絵画表現として注目を集めた。近年の作品の多くは、聖書や神話、小説といった物語を発想の源に制作。そこには、かつての歴史画や物語画のように具体的な人物や出来事は描かれず、象徴的に用いた矩形の形象や、放射状に広がる描写によって表された、寂寥とした風景が現れる。

 本展では、自身の過去、現在、未来を主題とし、去来する数々の記憶の断片を幅16メートルの大画面に再構成した新作を発表。これまで描いてきたドローイングが素材のひとつに用いられ、山本の自叙的な作品へと再生される。
 
 展覧会のタイトルにある「AJAR」は、ドアなどが半ば開かれた状態のこと。内と外、自己と他者、生と死といった、相反する様々なものを分かちつつ結ぶ存在であるドアを基点に、多様な主題によって展開した近年の代表作を交え、山本作品の景色をめぐる。