EXHIBITIONS

日野之彦「モデル」

2020.10.16 - 11.14

日野之彦  首に手を置く 2020

 独特の人物像を描いてきた画家・日野之彦(ひの・これひこ)の個展がSNOW Contemporaryで開催される。

 日野は1976年石川県生まれ。2005年のVOCA賞受賞以来、インパクトの強い人物像で注目され、人物像のモチーフは多彩なバリエーションがあるものの、これまでの作品のほとんどは自身の身体をモデルとしてきた。

 本展では新たな試みとなる、他者をモデルを描いた油彩とドローイング合わせて約20点を発表。日野は今回、あえてモデルを描くことに挑戦した理由を「あらためて生身の人間の存在感を目の前で感じとってみること」を重要視したためと述べている。また、 「これまで人物像を描くにあたって、顔つきや体つきを変形させて、特異なイメージを探ってきた。ここにきて、人体を変形させるための新しい基準を見つけたという思いだった」とも説明し、自分以外の生身の人間を眼前におくことで、自身とモデルとの距離によって生じる見え方の違いに興味をひかれたと言う。

 同じ角度からでも距離によって人体の見え方が異なることに着目してきた日野。新たなモチーフを描く新作群では、モデルの全身を俯瞰する時には数メートル離れ、細部を観察する時には接近するという、距離によって異なる見え方をするモデルの諸要素をひとつの人物像に統合し、肌の質感や毛髪、身体の形状や瞳の映り込みに至るまでより鮮明に描いている。これまでの作品と同様、モデルの感情や個性といったアイデンティティは排除され、そしていままで以上に人体の存在そのものに肉薄している。