EXHIBITIONS

長島有里枝「B&W」

2020.10.16 - 11.21

長島有里枝 山、ルツェルン、スイス 2007 ©︎ Yurie Nagashima / MAHO KUBOTA GALLERY

長島有里枝 「past, perfect, progressive. / 過去完了進行形」より 2019 ©︎ Yurie Nagashima / MAHO KUBOTA GALLERY

長島有里枝 「past, perfect, progressive. / 過去完了進行形」より 2019 ©︎ Yurie Nagashima / MAHO KUBOTA GALLERY

 写真家の長島有里枝が、MAHO KUBOTA GALLERYでは4年半ぶりとなる個展を開催する。

 長島は1973年東京都生まれ。93年に『アーバーナート#2」展でパルコ賞を受賞しデビュー。2001年に第26回木村伊兵衛賞を受賞し、10年に『背中の記憶』(講談社)で第26回講談社エッセイ賞を受賞する。アイデンティティや家族など、他者との関係性をテーマに写真作品を制作するいっぽう、近年では女性のライフコースに焦点を当てたインスタレーション作品を発表している。17年の「そしてひとつまみの皮肉と、愛を少々。」(東京都写真美術館)を皮切りに美術館個展が続き、今年、第36回東川賞を受賞する。

 本展では、長島が祖母から引き継いだ大量の押し花を、印画紙のうえに並べ制作した8×10のフォトグラム作品と、木板に写真用感光剤を塗布してプリントした風景の作品を展示。フォトグラム作品は群馬県立近代美術館で、風景の作品は横浜市民ギャラリーあざみ野でそれぞれ初公開された作品で、いずれも長島が暗室のなかでプリントしたモノクロの写真作品であり、今回はこれらをインスタレーションとして新たに発表する。

 写真の撮影が携帯電話などのカメラ機能でも気軽にできるようになり、SNSなどを通じて画像が何気なく発信されているいま、長島は、暗室のなかで印画紙を扱い焼きつけるアナログな作業を、「たんなるイメージだと思われているものを世界に存在する物質に置き換えるプロセス」だと表現している。

 本展は過去に網膜がとらえたイメージの再現であるとともに、物質としての重みをもった写真のプリントが記憶と結びついた象徴性を暗示しながら、鑑賞者とのあいだにレイヤーを隔てて構成するインスタレーションとして展開される。