EXHIBITIONS

没後10年 井上ひさし展

―希望へ橋渡しする人

2020.10.10 - 12.06

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井上ひさし 「吉里吉里人」原稿 仙台文学館蔵

井上ひさし 『父と暮せば』書き抜き帳 個人蔵

こまつ座旗揚げ公演チラシ 頭痛肩こり樋口一葉 仙台文学館蔵

井上ひさし 撮影=佐々木隆二

『吉里吉里人』『手鎖心中』などの小説でも知られる劇作家、井上ひさしの展覧会が開催される。
 
 劇作、小説、言葉から日本語の豊かさを伝えた井上ひさし(1934〜2010)。人々に愛されるNHKの連続人形劇『ひょっこりひょうたん島』の台本を手がけ、その後、戯曲『日本人のへそ』(1969)で演劇界デビューすると劇作家として才能を発揮していく。『手鎖心中』(1971)、『吉里吉里人』(1981)などの小説も高く評価され、また84年からはこまつ座を旗揚げし、『頭痛肩こり樋口一葉』(1984)などを上演した。

 最後の戯曲となった『組曲虐殺』(2009)は、プロレタリア作家・小林多喜二を描いた評伝劇であると同時に、活動家であった井上の父親の影も重ね、また後年、社会的発言も積極的に行った井上自身の強い思いを込めた作品。

「絶望するには、いい人が多すぎる。希望を持つには、悪いやつが多すぎる。」という劇中の多喜二の台詞の後には、「絶望から希望へ橋渡しをする人がいないものだろうか……いや、いないことはない。」という言葉が続くが、井上は絶望的な状況のなかでも、ほんの少しだけ上を向いてみようと思わせる作品を数多く残した。

 作家の没後10年を経たいま、時に風刺を込め、明るく闊達な笑いで人々を楽しませた井上の言葉を紹介。『吉里吉里人』の原稿やこまつ座の旗揚げ公演ポスター「頭痛肩こり樋口一葉」などの関連資料を展示する。

 世田谷に縁のある作家を紹介する、世田谷文学館の開館25周年という記念の年に開催される待望の展覧会。