松岡一哲「やさしいだけ」

　写真家・松岡一哲の個展「やさしいだけ」がタカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルムで開催されている。

　松岡は1978年生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、スタジオフォボスでの勤務を経て、独立。フリーランスの写真家として活動する傍ら、2008年6月よりテルメギャラリーを立ち上げ、運営を行う。主にファッション、広告などコマーシャルフィルムを中心に活躍するいっぽう、日常の身辺を写真に収めながらも、等価なまなざしで世界をとらえて撮影を続けている。主な個展に、「マリイ」（Bookmarc、東京、2018）、「マリイ」（森岡書店、東京、2018）、「Purple Matter」（ダイトカイ、東京、2014）などがある。

　松岡は、妻・マリイを被写体とした、あるいはその存在が感じられる景色、部屋や街といった日常的な風景を収めた私写真の系図に属する写真作品を発表してきた。私たち自身の内に蔓延る包括的な概念や言葉に依る作家の解釈は、人間がつくり出した所与の定義のうえになるものに過ぎないとし、写真という非言語メディアを介して、世界の再解釈をするような試みを続けている。

　タカ・イシイギャラリーでの初個展となる本展では、2018年に上梓し大きな注目を浴びた自身初の写真集『マリイ』の掲載作品と、最新作から約17点を展示する。