EXHIBITIONS

静岡市美術館開館10周年記念 生誕110年・没後30年

絵本画家・赤羽末吉展

『スーホの白い馬』はこうして生まれた

2020.10.03 - 11.29

赤羽末吉 『スーホの白い馬』(福音館書店)表紙(部分) 1967 ちひろ美術館蔵

赤羽末吉 『かさじぞう』(福音館書店)表紙 1960 ちひろ美術館蔵

赤羽末吉 『ももたろう』(福音館書店)表紙 1965 ちひろ美術館蔵

赤羽末吉 『だいくとおにろく』(福音館書店)より 1962 ちひろ美術館蔵

赤羽末吉 内蒙古の青年 1943 ちひろ美術館蔵

内蒙古(阿巴嘎大王府) 1943 撮影=赤羽末吉 一般財団法人日本カメラ財団蔵

内蒙古(貝子廟) 1943 撮影=赤羽末吉 一般財団法人日本カメラ財団蔵

 モンゴルの雄大な風景を描いた『スーホの白い馬』などで知られる絵本画家・赤羽末吉(あかば・すえきち)の展覧会が開催される。

 赤羽は1910年生まれ。22歳で満洲(中国・東北部)へ渡ると、仕事の傍ら土俗人形の蒐集や影絵人形芝居を研究し、日本画家としても活躍。同時に満洲画壇における気鋭の論客でもあった。43年、取材旅行で訪れた内蒙古(現・内モンゴル自治区)の壮大な風景に感動した赤羽は、そこで目にしたものを大量の写真やスケッチに収め、引揚げ時に命がけで持ち帰った。

 これらの資料をもとに、いまも子供たちに読み継がれている絵本『スーホの白い馬』を描き、その後も満洲時代に培った経験に基づく、日本やモンゴル、中国の少数民族の民話を数多く手がけた。80年には、全業績に対して国際アンデルセン賞画家賞を受賞する。90年に逝去。80歳で亡くなるまで制作を続け、生涯で約80冊もの絵本を発表した。

 本展では内蒙古取材時の貴重な写真やスケッチ、資料などから『スーホの白い馬』誕生の軌跡を探るとともに、ちひろ美術館が所蔵する赤羽の絵本原画やデビュー以前に描かれた作品約300点を通して、満洲時代の活動から最晩年までの画業を紹介する。

『だいくとおにろく』や『ももたろう』など、いまも読み継がれるロングセラー絵本の数々も見どころのひとつ。また、優れた評論や随筆を数多く残した赤羽の言葉から作品をひも解く。