EXHIBITIONS

宮崎静夫展 死者のために

宮崎静夫 三連画《飛翔する夏草》中央 1971 つなぎ美術館蔵

 宮崎静夫(1927〜2015)は、シベリア抑留での体験をもとに、シリーズ「死者のために」を描いた熊本出身の画家。熊本県小国町の農家に生まれた宮崎は、15歳で自ら軍に志願して満州国(現・中国東北部)へ渡り、終戦間際には最前線での戦いを経験した。終戦後に捕虜として4年過ごしたシベリアの収容所では、極限状態で生きる人々を目の当たりにし、強い衝撃を受けた。

 4間の抑留生活を終えて帰国した宮崎は画家を志し、海老原美術研究所で学んだ。1968年の欧州遊学を経て、画家として自問自答を続けるなかで宮崎は「死者のために」シリーズを制作。フランドル美術の技法を生かした同シリーズは、異国の地で散った人々へ贈るレクイエムでもあり、戦争の不条理を伝える作品として高い評価を得た。

 つなぎ美術では 2019年の春から冬にかけて宮崎のアトリエなどを遺族の協力を得て調査。その結果、宮崎が「死者のために」シリーズにおいてフランドル美術の技法を取り入れただけでなく、精神性や様式からもアイデアを得ようとしていたことを示唆する、宮崎の画業を語るうえで欠くことのできない貴重な作品を発見するに至った。
 
 本展では、その貴重な作品を含む新収蔵作品と、同館で収蔵していた「死者のために」シリーズを交えて展示し、戦争の不条理を伝えた画家の歩みをたどる。