EXHIBITIONS

ことばと版画

タイラーグラフィックス・アーカイブコレクション展Vol.33

 もっとも古い時代の印刷物は、遡ること仏教の経文と図像を表した木版とされ、その誕生以来、文字や言葉とともにある存在だった版画。技法や版種が発展しながらも、主に書物の挿絵という目的でつくられた版画は美術表現であると同時に、言葉と互いに補完し合いながら、宗教の教義や物語を伝えるための情報メディアでもあった。

 近代以降、版画は情報伝達の役割から解放され、複雑な技法によって巨大なイメージを展開するなど、独立した美術表現としての性格を強めたが、詩画集や挿画本といった形式の表現は独特の魅力をもつものとして、今日でも様々な作家によって生み出されており、言葉と版画の関係はそれらのなかに生き続けている。

 そして20世紀以降の版画を含めた美術全般では、1910年代のダダイズムや、これに影響を受けた第二次大戦後のポップ・アートやコンセプチュアル・アートなどにおいて、文字そのものをイメージ要素としてとらえる、あるいはイメージと言語の関係を問い直すといった動機から、作品のなかに文字や言葉がしばしば積極的に導入されるようになった。こうした試みの作品がつくり出されるようになり、詩画集などとはまた異なる、言葉との関わりを見て取ることができる。

 本展では、CCGA所蔵のタイラーグラフィックス・アーカイブコレクションから、ヘレン・フランケンサーラーやロバート・マザウェルらによる版画集や詩画集を展示。ここに、ロイ・リキテンスタインの文字が画面に描き込まれた作品などを加え、言葉と版画の関係について考える。