EXHIBITIONS
モノクロームの冒険
日本近世の水墨と白描
煤(すす)に膠(にわか)で粘性を与えてつくられる墨は、東洋において、文字を書く際の主たる材料であると同時に、書と密接に関わって展開した画(絵画)にとっても最重要の材料であり続けてきた。そうした墨で描かれる絵画は大きく、濃淡やぼかし、抑揚のある描線を駆使する「水墨画」と、均質な細い線を主とする「白描(はくびょう)画」に分けることができる。
白描画は元来、着色画に対する言葉で、白い紙に黒い墨が映えるモノクロームの美の世界。対して水墨画は、中国の唐時代に、現代のアクション・ペインティングさながら墨をはね散らして描く人々が登場したことで、墨の表現の多様性が再認識されたところに始まった。
日本では、白描画は早く奈良時代に、また水墨画も平安時代末期以降、中世を通じて作品が数多くもたらされ、それらに刺激を得た画家たちによって独自の発展を遂げた。そして近世で狩野派、琳派、円山四条派の画家たちは、趣向を凝らした水墨で個性を競い合い、土佐派や住吉派、復古大和絵派は、ときに淡彩を加えつつ、ストイックな白描を手がけた。
本展は、それぞれの表現で、墨の可能性を追求してきた水墨と白描の魅力を、日本近世の作例によって紹介する。
水墨画では、長沢芦雪が巨大な画面に中国の詩人・蘇軾が長江の名勝で遊ぶ様子を描き、その奔放で卓越した水墨技を発揮した《赤壁図屏風》(重要美術品)や、桃山時代に鷹図を得意とした曾我直庵の系譜にあると考えられている曾我宗庵筆の《鷲鷹図屏風》などを展示。いっぽう白描画では、『源氏物語』の名場面をもとに江戸時代のやまと絵の画家・住吉具慶が制作したとされ、モノクロームに色や金も加えた作品《源氏物語画帖》、復古大和絵派の冷泉為恭(れいぜい・ためちか)が、均質な墨線を本質とする白描に、流麗な動きを取り入れた《納涼図》などが展示される。
白描画は元来、着色画に対する言葉で、白い紙に黒い墨が映えるモノクロームの美の世界。対して水墨画は、中国の唐時代に、現代のアクション・ペインティングさながら墨をはね散らして描く人々が登場したことで、墨の表現の多様性が再認識されたところに始まった。
日本では、白描画は早く奈良時代に、また水墨画も平安時代末期以降、中世を通じて作品が数多くもたらされ、それらに刺激を得た画家たちによって独自の発展を遂げた。そして近世で狩野派、琳派、円山四条派の画家たちは、趣向を凝らした水墨で個性を競い合い、土佐派や住吉派、復古大和絵派は、ときに淡彩を加えつつ、ストイックな白描を手がけた。
本展は、それぞれの表現で、墨の可能性を追求してきた水墨と白描の魅力を、日本近世の作例によって紹介する。
水墨画では、長沢芦雪が巨大な画面に中国の詩人・蘇軾が長江の名勝で遊ぶ様子を描き、その奔放で卓越した水墨技を発揮した《赤壁図屏風》(重要美術品)や、桃山時代に鷹図を得意とした曾我直庵の系譜にあると考えられている曾我宗庵筆の《鷲鷹図屏風》などを展示。いっぽう白描画では、『源氏物語』の名場面をもとに江戸時代のやまと絵の画家・住吉具慶が制作したとされ、モノクロームに色や金も加えた作品《源氏物語画帖》、復古大和絵派の冷泉為恭(れいぜい・ためちか)が、均質な墨線を本質とする白描に、流麗な動きを取り入れた《納涼図》などが展示される。