EXHIBITIONS

市原湖畔美術館 関連企画

田中信太郎作品展

田中信太郎 羽化 2008

 アートフロントギャラリーでは、市原湖畔美術館(千葉)にて開催中の田中信太郎展「風景は垂直にやってくる」の関連企画を開催する。

 田中は1940年生まれ。高校卒業と同時に茨城から上京し、フォルム洋画研究所に在籍しながら自己表現を探求。59年にアッサンブラージュによる作品で二紀展の褒賞を受賞し、弱冠19歳にして美術界で注目される。

 60年には前衛美術集団「ネオ・ダダイズム・オルガナイザーズ」に参加。65年の初個展では、ハートなどのトランプの記号の一部を拡大してキャンバスに表現した作品を発表し、それまでのアッサンブラージュやオブジェから、純粋抽象へと移り変わりを見せた。そして68年に発表された《点・線・面》のミニマルなインスタレーション的な表現は美術界のみならず、倉俣史朗をはじめとするデザイナー、建築家らにも強いインパクトを与えた。

 病気を克服して復帰した80年代後半は、それまで手がけてきた幾何形体的な作品とは対照的に、《風景は垂直にやってくる》に代表されるような、文学的な有機的な印象の作品を展開。その後、ミニマルな絵画、波や子宮を題材にした作品、卵状の造形物や十字架を彷彿とさせる作品などを発表し、2019年8月に79歳で逝去するまで柔軟に表現を探求し続けた。

 生前、「最初から表現が一元的に確立した作家になりたいとは思ってないんですよ。あくまでもいろんな接点のなかで変化をし続けるような作家でありたい」「どんな風がきても倒れないで、その風を受けて一緒に舞い上がれるように」と語った田中。本展では、数多くの作品群のなかから、72年のヴェネチア・ビエンナーレの出品作、91年の個展で発表された、堂々とした色彩が響き合う絵画作品、彫刻作品のために描かれたドローイングなどを展示する。