EXHIBITIONS

彼女たちは歌う

小林エリカ 彼女たちの戦争1:マリア・スクウォドフスカ=キュリー(『ちくま 2020.1.No.586』 デザイン=名久井直子) 2020

乾真裕子 月へは帰らない 2020

遠藤麻衣 私は蛇に似る 2020

菅実花 A Happy Birthday 2019

金仁淑 Between Breads and Noodles: Grandfather and I 2014

鴻池朋子 インタートラベラー 2017

スプツニ子! 生理マシーン、タカシの場合。 2010

副島しのぶ 人形が悲しみを演じるとき 2020

百瀬文 Social Dance 2019

山城知佳子 チンビン・ウェスタン『家族の表象』 2019

ユゥキユキ あなたのために、 2020

 歴史や日常、テクノロジーなど様々な事象や感情を、女性アーティストの視点から見つめる展覧会「彼女たちは歌う」が開催される。本展には、乾真裕子、遠藤麻衣、菅実花、金仁淑(キム・インスク)、鴻池朋子、小林エリカ、スプツニ子!、副島しのぶ、百瀬文、山城知佳子、ユゥキユキの11人が参加。キュレーションは、荒木夏実(東京藝術大学美術学部准教授)による。

 身体、ジェンダー、ジェネレーション、国、政治、環境、時代。自分と他者のあいだにある違いを尊重し、交流し、理解し合うことはできるのか。本展では、「女性性」のテーマに限らず、11人の女性アーティストによる様々な作品を通して浮かび上がる、「境界」の曖昧さと揺らぎの表現に着目する。

 フェミニズムの視点によるパフォーマンスを用いた映像作品を制作する乾真裕子、演劇や映像など自らの身体を介して、社会規範に対する軽やかな問題提起を行う遠藤麻衣、ラブドールの妊娠をテーマにした写真シリーズなど、未来の生殖の可能性や、人と人形の境界を探る作品を発表する菅実花、自身の身近にある在日コリアンのコミュニティに焦点を当てる金仁淑(キム・インスク)。

 気候や地形をも取り込んだサイトスペシフィックな表現で芸術を問い直す鴻池朋子、核の歴史における女性科学者の人物像に迫るなど、独自の視点によって過去と現在をつなぐ小林エリカ、ジェンダーとテクノロジーの関係をテーマとした作品で、男性が中心の科学や医学の世界に疑問を投げかけるスプツニ子!、アジアの民間伝承や民俗文化をリサーチし、民族や宗教、時代を超えて人々が共有するイメージを作品化する副島しのぶ。

 百瀬文は、撮影者と被写体の関係性や、コミュニケーションの「ズレ」「はざま」に生じる不確かさと可能性に着目し、山城知佳子は、写真や映像、インスタレーションによって太平洋戦争や米軍基地などの沖縄特有の問題を掘り下げ、そしてユゥキユキは、コスプレ、アイドル、BLなどのサブカルチャーに関わりながら、親子間に生じる束縛や閉塞感を表す作品を発表している。

 世間の枠組みではなく、それぞれの身体・思考・体験を通して、切実な思いや痛み、そして希望をのせた「歌」を唱するアーティストたち。本展では、男と女、人間と非人間、過去の人物や家族を見つめ直し、性や種、場所や時代を超越した新たな関係性を探求する。

 また本展では、女性として日々感じてきた疑問や体験について参加アーティストたちと重ねてきたオンラインミーティングでの議論や、個々のアーティストたちが語る言葉を冊子やイベントで紹介していく予定だ。