EXHIBITIONS

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黒⽥泰蔵、ピエロ・マンゾーニ、エンリコ・カステラーニ

2020.07.27 - 08.14

展示風景より photo by KEI OKANO

展示風景より photo by KEI OKANO

展示風景より photo by KEI OKANO

 黒⽥泰蔵、ピエロ・マンゾーニ、エンリコ・カステラーニによるグループ展が東京・銀座のTHE CLUBで開催。本展では、「白(非色)」が秘める無限の可能性を、3⼈のアーティストによる作品を通して探る。

 黒田は1946年滋賀県生まれ。日本の現代工芸においてもっとも重要なアーティストのひとり。70年代にカナダでの修業を経て、後に人間国宝となった陶芸の巨匠・島岡達三に師事。92年頃より、黒田は奇抜なかたちや装飾的なデザインよりも、李朝の白磁の美しさに魅了され、高火度で釉薬を使わない「焼き締め」の白磁の制作を始める。以降、白磁を生み出すことに身を捧げ、制作を通して身体と心の調和を追求するという精神的な過程を、日本にとどまらず、ニューヨークやバーゼル、そして韓国において発表。磁器をコンセプチュアル・アートな表現へと昇華させた作品は、多くのアーティストや美術評論家、コレクターの注目を浴び続けている。

 マンゾーニ(1933〜1963)は20世紀を代表するイタリアの美術家。独学でアートを学び、57年に多様な素材を用いて「アクローム(非色)」と題した白一色の絵画作品の連作を発表した。同シリーズは、白い画面がそれ以上の意味や価値を持たないただの「白」であり、それによりあらゆる物質的限定から解放されたすべてになり得ることを主張するもの。本来、陶磁器に用いられる中国粘土をキャンバスに取り入れることで、芸術作品としての新たな手法を見出した。また反芸術的活動を行ったことでも知られ、国際的に活動した日本の「グループ・ゼロ」とも関わった。

 同じイタリア出身のカステラーニは、ルーチョ・フォンタナを敬愛し、また自身もドナルド・ジャッドをはじめ数多くのアーティストに多大な影響を与えた、美術史をひも解く上で欠かせない人物。 ベルギーの王立芸術アカデミーで彫刻・絵画・建築を学んだ後、マンゾーニの「白」に魅せられたカステラーニは、絵画からほかの要素を取り除き「表面」の表現を突き詰め、59年に木枠に釘を打ち込むことでキャンバスの画面を波立たせて模様を構成する「レリーフ状の黒い表面」を発表。後に白いキャンバスに立体性を持たせることで光の陰影を作品にする「光の絵画」を生み出した。

 ⻄洋と東洋、3⼈のアーティストが見せる究極的な「白の世界」。本展は、物質からの離脱を試み、その可能性を広げるために「白(非色)」を用いたアーティストたちによる、従来の伝統を超えた抽象世界への旅に誘う(※ピエロ・マンゾーニ作品は、7月30日までの展示予定)。