EXHIBITIONS

小林七生「夜を飛ばす」

2020.07.11 - 08.08

Photographed by Yuriko Takagi

「縫う」という時間と行為そのものを主軸に表現を展開するアーティスト・小林七生(こばやし・ななを)が、2009年以来ぶりとなる個展を開催する。

 小林は独学で活動を始め、無数の糸や石、ビーズ、スパンコールを「縫う」時間と行為から純粋に現出する立体作品を制作。同時に、音楽家としても活動している。「FATHER」と称するプロジェクトでは、秩序と無秩序を行き来する根源的な音楽体験を目的としたライブ・パフォーマンスを中心に国内外で発表。万物の謎を読み解くため、アーティストと音楽家、相互作用する2つの活動を往来し続けている。

 本展では今回のために制作された新作群を展示。個々の作品と自身との余白に潜んだ要素を、映像や新たな空間構成に展開することを試みる。

 展覧会のタイトル「夜を飛ばす」は、小林が書き溜めていた詩の一節であり、意識と無意識を往来しながら手を動かし続け、最後の一粒が結びついて作品が完成する時、突如として目の前にかたちが現れる状況を表した言葉。心理的なものや感情的なものと真逆に立ち、粒子をひたすらつなぐことに集中するというその過程は、実際には存在しない何かを知覚するための行為のようでもある。

 思考から離れることから生まれる偶然性を持つ小林の造形には、知覚と創造力が同居し、解釈から解き放たれた心地よさや決まりごとのない自由さ、そして丹念に縫い留められた時を見出すことができる。