竹内公太「Body is not Antibody」

　緻密なリサーチに基づく映像作品や写真、インスタレーションを発表してきた竹内公太の個展が、SNOW Contemporaryで開催される。

　竹内は1982年生まれ、2008年に東京藝術大学美術学部先端芸術表現科を卒業し、現在は福島県を拠点に活動。緻密なリサーチとフィールドワークをベースに構築したコンセプトを作品化し、それらを通じて現代社会における情報のあり方や意識をはじめとした、多様な問題を批評的に提示してきた。

　これまで、ふくいちライブカメラのモニターに突如現れた指差し作業員の代理人として、災害を見る側の意識と匿名表現者の自意識を浮き彫りにした個展「公然の秘密」（2012） や、手（＝携帯、機器）で情報を取得する現代人の風景をとらえた個展「手の目」（2014）を開催。

　近年は、福島県いわき市内の石碑巡りをトレースすることで、メディアの性質と人の記憶のあり様を示した個展「写真は石碑を石にする、それでも人は」（2017）や、第二次世界大戦時の1944年から翌年にかけて日本軍によって投下された風船爆弾の歴史を題材とした映像作品《盲目の爆弾、コウモリの方法》（2019）などの制作を通じ、自らの身体性をもって、絵画や映像、写真、彫刻など多様なメディアを用いたインスタレーションを展開している。

　本展では、竹内公太が2019〜20年に福島県の立入制限区域で警備員をしていた時期に、現地で撮影した光跡写真をもとに制作したオリジナルフォント《Body is not Antibody》と、その関連作品を発表。タイトルの「Body is not Antibody」は、「身体（body）は抗体（Antibody）ではない」といった意味を持つ。自らの身体を国家の行う復興事業に提供した体験から生まれた同作品は、個人にとっての身体の意味や所在について問いかける。

　新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大に際し、社会の相互監視と行政が個人の生活様式へ干渉するいま、本展は個々の身体と国家や社会との関係性を再考する機会となるだろう。