山本隆博「Aging Painting」

　古い絵葉書や肖像写真を細密に描写するニューヨーク在住のアーティスト、山本隆博の個展がMAKI Galleryで開催される。

　山本は1984年鳥取県生まれ。高校卒業後にスペインとシンガポールに滞在し、現在はニューヨークを拠点に活動。ポストカードなどのファウンド・イメージや古いアーカイヴ写真を題材に、ハイパーリアリズムの手法を用いて、オリジナルと複製の関係に問題提起する作品を制作している。

　山本は制作にあたって、記名のない古い絵葉書や肖像写真に対象に見られる僅かな破れや擦れといった経年の形跡を精密にとらえ、超絶技巧とも言えるテクニックで写実的に描画。その背景には、複製されたものとオリジナルの関係性を追求したいという作家の思いがある。
　
　オリジナルには価値があり、複製はそれに劣るもの。こうした一般的な考えに対し、山本は時間の経過とそれに伴う劣化現象を丁寧に描き写すことで、複製品が物質としての唯一性を獲得する可能性を提示している。

　本展では、新作および近作を中心に展示。フォトリアリズムのような驚くべき描写力を持ちながら、その奥に独自のコンセプトを潜ませる山本の表現は、複製を存在意義や、唯一性・オリジナルとは何かを見る者に考えさせるだろう。