EXHIBITIONS

廣瀬智央「地球はレモンのように青い」

2020.06.01 - 07.26

廣瀬智央 レモンプロジェクト 03 1997 作家蔵 Photo by Tadahisa Sakurai © Satoshi Hirose

廣瀬智央 マーレ・ロッソ 1998 ペルシャン・ギャベ 作家蔵 Photo by Tartaruga © Satoshi Hirose

廣瀬智央 空のプロジェクト:遠い空、近い空 2013 アーツ前橋コミッションワーク 撮影=木暮伸也

廣瀬智央 ビーンズコスモス(タマ) 2016 作家蔵 Photo by Kenji Takahashi © Satoshi Hirose

廣瀬智央 島:9年目の存在 2011-2002 作家蔵 Photo by Tartaruga © Satoshi Hirose

 嗅覚を刺激する作品《レモンプロジェクト 03》などで知られるアーティスト、廣瀬智央(ひろせ・さとし)の初となる大規模個展が開催される。

 廣瀬は1963年東京生まれ。89年の多摩美術大学卒業後にイタリア政府給費奨学生として渡伊し、ポーラアート財団の研究奨学金を得てミラノ・ブレラ美術アカデミーを修了。美術運動「アルテ・ポーヴェラ(貧しい芸術)」の代表的作家ルチアーノ・ファブロに師事した。2008年には、文化庁在外研修員としてニューヨークに滞在。現在は、ミラノと東京を拠点に活動している。

 廣瀬の代表作のひとつ《レモンプロジェクト 03》(1997)は、約3万個のレモンを用いて嗅覚を刺激し、全身で感じる作品。日常生活に潜む小さな事象の豊かさに私たちの目を向けさせることを意図し、使用したレモンは展覧会終了後、石鹸や紙へと再生させ、エコロジーの視点から作品の循環についても考えられている。

 また廣瀬は近年、病院でのワークショップや母子生活支援施設での長期プロジェクトを実施。パブリック・アートにも着手するなど、社会との接点を強く意識した作品に取り組んでいる。

 本展では、イタリア渡航以後に発表した初期の作品から国内未発表作品、23年ぶりに日本で再制作する《レモンプロジェクト 03》、さらに新作も含めて一挙に展示。イランの遊牧民と共作した手織りのギャベ(絨毯)を用いた作品《マーレ・ロッソ》の21年ぶりとなる公開も見どころのひとつとなる。

 加えて、廣瀬が16年からアーツ前橋と協働して行う「空のプロジェクト」(2016〜2035)を紹介。前橋市の母子生活支援施設の子供たちや母親と空の写真を交換し合う同プロジェクトは、生きること、感じることは何かという素朴な疑問を、日常生活の経験から改めて振り返る。