EXHIBITIONS

いのちの裂け目―布が描き出す近代、青森から

遠藤薫 Uesu(waste) 2018

碓井ゆい demands and resistance(要求と抵抗) 2019 Photo by Ryohei Tomita Photo courtesy: Assembridge NAGOYA Executive Committee

碓井ゆい shadow of a coin 2013-2018 Photo by Shinya Kigure

林介文(リン・ジェ―ウェン/ラバイ・イヨン) weaving roads(織路) 2015-2016

林介文(リン・ジェ―ウェン/ラバイ・イヨン) Red Dinosaur 2019

遠藤薫 Gravity and Rainbow「重力と虹霓」 2019 Photo by KATO Ken

 青森公立大学 国際芸術センター青森(ACAC)は、同館で行ってきた「青森市所蔵作品展」の流れをくむ展覧会を開催。本展では、アジアを拠点として手芸や工芸、伝統文化の技術をもとに現代美術の活動をするアーティストの、碓井ゆい、遠藤薫、林介文(リン・ジェ―ウェン/ラバイ・イヨン)の3名を迎え、青森市教育委員会が所蔵する民俗資料から発想した新作や、文化財を用いたインスタレーションを展示する。

 碓井は1980年東京都生まれ。手芸などの身近なテクニックや素材を用いて、平面からインスタレーションまで様々な作品を制作。現代社会で見てみぬ振りをされている出来事や歴史を、個人的な経験や疑問を社会的・政治的なものとしてとらえ、文献資料やインタビューによるリサーチを通してひも解いている。

 遠藤は89年大阪府生まれ。沖縄県立芸術大学工芸専攻染織コースおよびアルスシムラ卒業。テキスタイルに複雑な社会的事実が織り込まれているという考えから、布を集め修復し作品化。生活に根差した工芸の本質を現代美術的な視座から探っている。また近年では、沖縄やベトナムを中心とする東アジア各地を訪れ、それぞれの土地の布について調査と蒐集を続けている。

 林は82年台湾・花蓮(ホアリエン)生まれ。バルセロナ自治大学大学院展示空間デザイン修士課程修了。台湾原住民の太魯閣(トゥルク)族の一員として、伝統的な織物の技法を用いながら、ジュエリーデザインの知識も活かし、彫刻的なインスタレーション作品を制作している。ときにコミュニティの織り手たちとも協働しながら、とくに女性の身体性やアイデンティティーなどに焦点を当てている。

 ものそれ自体から、そしてそれから生まれた表現からも多層的に開いていく裂け目。本展では、この傷口を覗き込むことで、国家や民族、家族といった共同体を超え、戦前の女子教育や戦争と花火、台湾原住民族と日本の関わりなど、現在と地続きである人々が生きてきた時代について考える。