EXHIBITIONS

東松照明「プラスチックス」

2020.06.09 - 06.27

東松照明 Plastics, Kujukuri Beach, Chiba 1987-89(Printed in 1996)

東松照明 Plastics, Kujukuri Beach, Chiba 1987-89(Printed in 1996)

 東松照明は、1960年代初頭から米軍基地や長崎といった社会的な対象をテーマとし、戦後日本を見つめ続けた日本を代表する写真家のひとり。本展では、これまで日本で紹介される機会の少なかった東松のカラー写真シリーズ「プラスチックス」より12点を公開する。

 東松は1930年愛知県名古屋市生まれ。愛知大学経済学部を卒業後に上京し、岩波写真文庫でカメラスタッフを経て、フリーランスとして活動。50年代から数々の作品を発表し、近年の写真家に多大な影響を与えた。

 アメリカ占領下の沖縄に滞在し、同地を撮影した写真集『太陽の鉛筆』(1975)を境に、東松が作品制作をモノクロからカラーへと転換するのは60年代末のこと。それまでのモノクロ写真に宿っていたアメリカの影は、本来の輝きを取り戻すかのように、東松のカラー写真のなかで息づいた。

 86年に心臓のバイパス手術を受けた東松は、療養のため東京を離れ、千葉の一宮町に転居。重いカメラを持って撮影することが困難となり、近くの九十九里浜に漂着したゴミを被写体とした「プラスチックス」シリーズの制作を始めた。

 波に揉まれてなお鮮やかな色をとどめるプラチックボトル、砂に埋もれた手袋やポリ袋、もげた人形の手。これら戦後の環境汚染の残骸は、波が引いた後のしっとり濡れた砂紋の上に緻密に置かれ、静物画のような荘厳さを放つ。その構成は、60年代の変貌しつつある都市、東京の路面に埋め込められた釘や鉄くずが宇宙的な深淵のように見える「アスファルト」を彷彿させ、海と陸、都市と文明、過去と未来、自然と人工物といった様々なインターフェイスを行き来する事象として存在する。

※MISA SHIN GALLERYは6月9日より再開し、本展の会期を6月27日まで延長して開催(当初の会期は2月28日〜4月18日)。最新情報は公式ウェブサイトにて案内。