EXHIBITIONS

トレイシー・テンプルトン展「Unsettled」

2019.12.21 - 2020.02.08

トレイシー・テンプルトン Halfway Somewhere 2016

 アメリカを拠点に活動する版画家、トレイシー・テンプルトンの個展が開催されている。
 
 テンプルトンは1972年カナダ生まれ。アメリカ、カナダを中心にヨーロッパ、南米、アジアなど世界各地で150以上の展覧会に参加。フォトグラフィ・エッチングを主な技法として、和紙や金箔、デジタル技術などを用いて制作を行い、個人が直面する困難や変化を出発点としつつ、より大きなスケールでの文化的問題や人間が持つ普遍性について言及する作品を発表してきた。

 本展では、現在の難民危機や移民問題に影響を受けて、2016年より制作を開始した作品《Unsettled》が展示されている。

 テンプルトンは同作品において、デジタルフォトプリントとシン・コレ(雁皮刷り)、ドライポイントなどを組み合わせたハイブリッドな版画技法を駆使し、制作工程の最後に金箔で施す線は、傷を癒す金継ぎの哲学を引用した。不安と美しさが共存するこの多層的な作品には、人は誰でも自分にとっての「サンクチュアリ-安息の地-」を希求し、物理的または精神的な旅に出ることを根源的に必要としているという、テンプルトンの考えが現れている。

 また本展では、テンプルトンが教鞭を執る米国インディアナ大学の教授であり、写真家のオサム・ジェームス・中川と共作した作品も並ぶ。