EXHIBITIONS

武蔵野美術大学90周年記念

帝国美術学校の誕生

金原省吾とその同志たち

中川紀元 青五氏の肖像 1916(大正5)年 武蔵野美術大学 美術館・図書館蔵

 武蔵野美術大学と多摩美術大学の前身である帝国美術学校は、1929(昭和4)年10月に開校し、今年で90周年を迎える。帝国美術学校の創立メンバーのひとりである東洋美術史家、歌人の金原省吾(きんばら・せいご)は晩年まで、当時の多彩な交流関係がわかる書簡や、開校までの足跡を詳細に綴った日記などを保管していた。これらは、当事者である金原の視点を知る貴重な一次史料であると同時に、美術学校新設を目指した同士たちの苦悩や情熱、人間関係をのぞかせる。

 本展は、金原とその周辺の帝国美術学校第1回教授会メンバー全22名の当時の作品や著作をあわせて展観し、武蔵野美術大学と多摩美術大学の礎を紹介する初の試み。共同研究「金原省吾の教育とその成果について」(研究代表者:本学美学美術史研究室教授 朴亨國[パク・ヒョングク])を通して新たにひも解かれた膨大な資料群のなかから、帝国美術学校の誕生の軌跡に迫る資料を抜粋して公開する。

 日本近代美術史の一端を担った画家、デザイナー、美術史家などとして知られる平福百穂(ひらふく・ひゃくすい)、森田恒友(もりた・つねとも)、杉浦非水(すぎうら・ひすい)、名取堯(なとり・たかし)、板垣鷹穂(いたがき・たかほ)らの作品や著作、大学美術館が所蔵する金原旧蔵の作品や図書資料(金原文庫)を展示し、「教養を有する美術家養成」という理念のもとで同士たちが目指した、美術教育の一端に触れる機会となる。