EXHIBITIONS

戸谷成雄「視線体」

2019.09.21 - 10.19

戸谷成雄 森 IX 2011 戸谷成雄展「洞穴の記憶」(ヴァンジ彫刻庭園美術館、静岡、2011)での展示風景 撮影=山本糾

戸谷成雄 竹藪Ⅱ 1975

 類い稀な彫刻観に裏付けされた作品群によって、日本の近代彫刻を牽引してきた戸谷成雄。その追究は太古からの根源的な⼈間の存在認識に関する問題まで奥深く広がっている。

「何もないところに、たしかにあると感ずる意識こそ人間にものをつくらせたのではないか」と問う⼾⾕は、「⾒えなさ」としての彫刻を⾒せる装置として、1975年のパフォーマンス《⽵藪》を発表。⽵藪の中にどの⽵にも触れないようにロープを張り、同じようにロープを持って⽵藪を数回歩くという⾏為によって、視線の通り道と⾃分が歩いた軌跡を目に見えるものとした。視線と⾁体が交差する場所をつくり出したこのパフォーマンスが起点となり、「無数の視線の集積こそが彫刻を⽣み出す」という彫刻理論が、その後の斜視線の束によって彫られるという構造を持った代表作「森」など数々の作品によって示された。

 本展では、⼾⾕の彫刻理論のひとつの表れである新作《視線体》を通して、作家の半世紀におよぶ彫刻観の⼀端を見せる。