三瀬夏之介 × 辻村唯 二人展

　絵画とやきものというそれぞれの分野で、自然がつくり出す偶然性を作品化する同世代の作家、三瀬夏之介と辻村唯による2人展が開催される。

　三瀬は日本画の素材を用いることに徹して日本の風土を描き、その模糊としたダイナミックな構図のなかに、自身の記憶や現代的なモチーフを緻密に表現。銅粉を混ぜたメディウムを用いて、作品を土に埋めて腐食させることで、絵画の中で緑青（ろくしょう）を生じさせ、まるで釉薬のような艶と色彩をつくり出している。

　いっぽう辻村は、やきものの制作において一貫して「自然釉」と呼ばれる天然の釉を使用。「自然釉」は窯の中で起こる灰と土の化学反応から生まれ、表面に付着した灰やガラス質の緑青の釉によって、人の手ではつくれない景色を生み出す。

　作品とは自然と人の「間」に位置するものであると語る三瀬、そしてやきものの制作とは、器形をつくり上げた後は、土と炎による自然の仕上がりをじっと「待つ」ことでもあると言う辻村。2人の姿勢には、作品の媒体が異なっていても、通底するものがある。

　2人の作家による自然に対する飽くなき挑戦を示す本展。三瀬が発表する新作は、2018年10月の大原美術館 有鄰荘での個展への出品作品であり、江戸時代の山水画家・浦上玉堂にオマージュが捧げられる。