EXHIBITIONS

総合開館20周年記念 TOPコレクション

「いま、ここにいる」

平成をスクロールする 春期

2017.05.13 - 07.09

佐内正史 〈生きている〉より 1995 東京都写真美術館蔵

佐内正史 〈生きている〉より 1995 東京都写真美術館蔵

 TOPコレクションは、毎年ひとつの共通テーマで、3期にわたって東京都写真美術館のコレクションを紹介する展覧会シリーズだ。リニューアル・オープン後、最初となるシリーズのテーマは「平成」。私たちの生きている場所、この時代とその表現を収蔵作品によって検証していく。 2007年に好評を博したコレクション展「昭和 写真の1945-1989」から10年。すでに昭和の時代は遠くなり、気がつくと平成の時代は四半世紀を超えている。西暦で言えば1990年代からゼロ年代、さらに10年代という時間の広がりの中で、作家たちはどのように時代や社会と関わり、作品を形にしてきたのか。「平成」というテーマ性で写真・映像作品を見ていくことで、どのような時代の姿、「平成」らしさが見えてくるのか。あたかもひとつの長い絵巻や画面を流して見るように時代をスクロールすることで、この時代に特有の価値観や意識、思想の変遷が浮き彫りにされてくるはずだ。

 本展は日本の現代作家たちの表現を通して、その背景にある社会性や文化状況をも照らし出していく。近年の新しい収蔵作品を中心に34,000点を超える当館コレクションから現代作品をセレクションして紹介する。

□春期「いま、ここにいる」
平成とは、「いま、ここにいる」ことの意味が繰り返し問われた時代といえるのではないだろうか。その始まりから四半世紀を越えるなかで、平成という時代には、社会問題や経済危機、自然災害などさまざまな困難な局面があった。個人では容易にあらがうことのできないそうした大きな問題に対し、まずは「いま、ここにいる」意味から考えること。シンプルかつ根源的な問いかけは、ときに困難な局面を打開する力を秘めている。 そして、写真とは、「いま、ここにいる」ことの記録であり、そこには作家それぞれの世界との関わり方が表れている。日常と非日常、またはその狭間で、作家はどのように世界と向き合い、「いま、ここにいる」ことの意味を考えてきたのか。本展では、今日の社会や文化をめぐる状況を踏まえて、出品作品をひもとき、平成という時代を振り返る。

[出品作家]佐内正史、ホンマタカシ、高橋恭司、今井智己、松江泰治、安村崇、花代、野村佐紀子、笹岡啓子