津田直「辺つ方（へつべ）の休息」

　世界を旅し、古代より綿々と続く、人と自然との関わりを見つめ続ける写真家、津田直。行く先々で目の前に広がる風景に全身で向き合い、自然を切り取るアプローチによって数々の風景作品を発表してきた。近年は、土着の信仰に支えられた聖域や独自の民族的文化を守り続ける集落での撮影や、古代文明をたどるフィールドワークに基づく作品づくりにも取り組む。

　2017年5月、冬から夏へと季節が移り変わる瞬間を追い求めたフィンランドでは、群島の岩場や岸辺から見つめた草木がいち早く夏の到来を察知して新芽を開く様や、人々が世代を超えて大切にしているという、短い夏を満喫するための小屋と周辺の自然の姿に、北欧の初夏を見出した。

　太宰府天満宮 文書館で開催される本展では、フィンランド南西部にあるヴァーノ島で芽吹いた植物や、ユヴァスキュラ近郊の湖畔に建つサマーコテージを包み込む空の色など、津田が写真にとらえた北欧の初夏の訪れを日本建築の中で披露。畳敷きの空間に特別設計した展示台は、ゴツゴツとした岩の多い島を歩くような心持ちで、視線を変えながら作品を見るための仕掛けにもなっている。