EXHIBITIONS

岩名泰岳 素描展「けものたちのかけら」

2026.01.24 - 02.28
 タグチファインアートで、岩名泰岳による個展「けものたちのかけら」が開催される。

 岩名泰岳は1987年三重県生まれ。2010年に成安造形大学造形学部造形美術科洋画クラスを卒業。卒業後すぐにアートアワードトーキョーで準グランプリを受賞する。2012年までドイツに滞在し、研究生としてデュッセルドルフ美術アカデミーで学んだ。2016年に第1回三重テレビ大賞、2020年に三重県文化賞文化新人賞を受賞。現在は三重県伊賀市島ヶ原を拠点に活動している。

 岩名は、故郷の自然や村の信仰をモチーフに制作を行ってきた。具象的な題材から出発しながらも、抽象度の高い洗練された表現へと展開される点が特徴である。島ヶ原村民芸術「蜜ノ木」の初代代表としての活動や、「ゑ講」の結成、地域の堆肥工場の従業員との共同制作による「堆肥壁画」など、土地に根ざした実践も継続している。

 タグチファインアートで6回目の個展となる本展は、近年のドローイングを中心に構成される。油彩画の制作過程で生まれた形や色の可能性を紙に描き留めた素描は、岩名の本質的な発想を端的に示すものでもある。これらのドローイングがまとまって展示されるのは本展が初めての機会となる。

 本展について岩名泰岳は次のようにコメントしている。
 「“過疎の歳月は人を減らして、巡礼の山を人が分け入ることのできない暗い森に変えてしまった。樹の根や獣たちに頭を砕かれた野仏は静かに土に沈んでいく。もはや小さな土地の物語を語り継ぐことでさえ限界を迎えたようだが、それでも年が明けると、だれかが森の境に小さな餅を供えていた。”――制作ノートより

 過疎地の記憶を語ることさえ難しくなってしまったその脆さは、日焼けした紙に木炭やパステルで描いた素描にもどこか似ている。

 以前から油彩画の下絵として素描を描くことはほとんどなかった。

 パンデミックが終息した頃、制作途中や描き終えた油彩画をもとに紙に描き留めるようになった。それは絵具を塗り重ねる過程で失われていく別の絵の可能性でもあるし、これらの素描によって立ち現れた形や色の発生が次の絵の展開につながっている。

 村で描いたいくつかの作品はアトリエを離れて二度と帰って来ることはないが、この場所で起きたことや自分の絵を忘れないためにも油絵具とは異なる画材によって、その時間のかけらを私は繰り返し紙に記録している」(プレスリリースより)。