スターリング・ルビー「VERT」

　光沢のあるポリウレタンやブロンズ、鋼鉄を用いた立体作品から、ドローイングやコラージュ、陶器、油彩画、写真、映像、さらにはキルトやタペストリーといった布作品まで、多様な素材や技法を駆使するスターリング・ルビー。

　ルビーの作品では常に様々な要素が緊張関係を保ちながら危うい均衡を成り立たせており、社会のなかの暴力や圧力、美術史に関わる問題のほか自身の過去も扱われ、すべての作品からは流動と静止、ミニマリズムと表現主義、純粋さと汚れの間で揺れ動く作家像を見ることができる。

　これまでロサンゼルス現代美術館（2008）、FRAC シャンパーニュ＝アルデンヌ（ランス、2012／同年ジュネーヴ現代美術センター、ローマ現代美術館に巡回）のほか、ベルヴェデーレ美術館 冬の宮殿（ウィーン、2016）などで個展を開催。作品はニューヨーク近代美術館、ソロモン・R・グッゲンハイム美術館、シカゴ現代美術館、サンフランシスコ近代美術館、テート・モダン、パリ市近代美術館、ストックホルム近代美術館を含む多くのコレクションに収蔵されている。

　本展では、詩人のゲオルク・ハイムが危機に瀕した1912年の世界について、天空の光景や暗い思索を記した黙示録的な詩『人生の影』にちなんだ最新作のペインティングを展示。「窓」を連想させる画面には輝く空があるいっぽうで嵐のあとの虹も描かれ、不確かな未来の姿を予示する心象風景が浮かび上がる。