EXHIBITIONS

多田さやか「Saturn」

2025.11.07 - 11.19
 亀戸アートセンターで、多田さやかによる個展「Saturn」が開催されている。

 多田の作品には、自身の感覚にもとづく「重力」や「歪み」が漂う。複数の視点が一枚の絵の中で共存し、形は整っているようでどこか不安定なわずかな違和感が、画面全体に緊張感を生み出す。その背景には、作家自身の「対称性」への興味がある。多田は猫の体の模様を見たときに感じた「怖さ」がきっかけとなり、動物や人の身体が持つ対称構造に関心を持つようになる。

 その後、宗教画のような厳密で客観的な対称性ではなく、自身の感覚や記憶にもとづいた私的なモチーフで構成されたシンメトリーを描いていることに気づく。描かれるモチーフは作家にとって象徴的でありながら、見る人にとっては意味が定まらないものとなり、その曖昧な関係性が作品に独特の引力と揺らぎをもたらす。